ルール改正に勝機がある。公認野球規則が改正され、ホームのクロスプレーが大きく変わる。広島緒方孝市監督(47)は「野球が変わる」と見抜き、ベースコーチを務める河田雄祐外野守備走塁コーチ(48)は「いち早く慣れる必要がある」。戦術が変わり、ベンチワークにも影響を及ぼす。走力は伝統的にカープの武器。キャンプでの連日の確認作業で優位に立つ。

 「野球が変わる-」。緒方監督はキャンプイン、開口一番にそう言った。現役時代に盗塁王を3度獲得。ホームクロスプレーで故障した経験も持つ指揮官だ。初日から審判団に入念に確認し、メニューにも走塁練習を多く取り入れる。

 緒方監督 大きく野球が変わる。うちは機動力を重視しているし、ルール変更にいち早く慣れる必要がある。いかに対応するか、じゃないか。戦術も変わる面が出てくると思う。

 戦術が変わる。俊足選手が多い広島。走者有利と言われるルール改正を追い風にしない理由はない。指揮官は例として「代走要員を増やすこと」を挙げた。接戦の終盤。走者有利なら、これまで以上にその枠を厚くすることで1点をもぎ取ることが可能になる。走者三塁で内野ゴロはすべてホームを狙う「ゴロゴー」の戦術がベースになる。

 走塁技術も重要視される。捕手は走者を追うようにタッチする「追いタッチ」になる。ビデオも導入され厳格に判定されるが、速度をギリギリまで落とさないスピード感のあるスライディングは印象がいい。キャンプでは何度もスライディングの練習を繰り返している。新任の河田外野守備走塁コーチは分析する。

 河田コーチ 見た目の印象はあると思う。あとはスライディングでも右足を前にするか、左足を前にするかで体の向きが違うからスピード感が変わってくる。回り込んでタッチを遠ざける手段もあるよね。

 守る側にも変化がある。緒方監督は「点差によっては、最初から外野手の前進守備をとらなくなることもある」と言う。セーフになる確率から言えば、リスクを背負う必要はないとの判断だ。接戦の野球は変わっていく。また植田バッテリーコーチは「決められたなかでやるしかないが、際どいプレーも出てくる。対応しかない」と話していた。

 首脳陣は「いち早く慣れることが大事」と口をそろえる。他球団よりも早く理解し、追い風にすることで得点力向上につなげることもできる。機動力野球を前面に出すことが重要なカギとなりそうだ。【取材、構成=広島担当・池本泰尚】

 ◆公認野球規則の改正 今季から本塁での危険な衝突を避けるための規定が、公認野球規則に追加される。「得点しようとしている走者は最初から捕手に接触しようとして(中略)走路から外れることはできない…」「捕手がボールを持たずに得点しようとしている走者の走路をブロックすることはできない…」などが明記される。米大リーグは昨季から適用、アマは既に内規で取り入れている。NPBは今季から、本塁打かどうかの判断に限られていたリプレー映像の使用を本塁上でのクロスプレーでも適用する。