ソフトバンクが小兵の活躍で3連敗を阻止した。ヒーローは約1カ月ぶり、今度3度目のスタメンに抜てきされた「9番右翼」の牧原大成内野手(23)だ。

 3回無死一、三塁からセーフティースクイズ。「チャンスで回ってきた。頭の中で出るだろうと思っていた。練習からずっとやってきた」。強めに転がした打球は投手の右をすり抜けていった。内野安打のおまけ付きで、貴重な先制打になった。さらに7回には左翼に決勝の犠飛。身長172センチの脇役の2打点で連敗を止めた。

 抜てきに応えたのは決して偶然じゃない。工藤監督は言った。「セーフティーやプッシュバントができる選手。今年に入って、ゴロやライナーを打つ練習をやり続けている」。2軍にいても、指揮官の方針はしっかりと浸透している。そこに強さの秘密がある。

 牧原にとっては、苦難の先の活躍だった。福岡県久留米市出身で、3年間を熊本・城北高で過ごした。第2の故郷が大地震に襲われた。「高校も休校になったし、友達の家もグチャグチャになった。3年間、お世話になった場所。少しでも勇気づけられたら…」。さらに1軍同行の4月27日にウイルス性胃腸炎にかかり、出場選手登録を抹消。完治まで5日間を要し、体重は2キロ減った。「ダメなことだけど、いい経験になったと思う」。そこに再びチャンスが巡った。

 工藤監督は「みんな、連敗は意識の中にあった。止められて、ホッとしたのはあると思う」。ベンチと選手が一体になっての勝利。チームは11カード連続で負け越しがない。【田口真一郎】

 ◆牧原大成(まきはら・たいせい)1992年(平4)10月15日、福岡県生まれ。城北(熊本)から10年育成ドラフト5位で入団。2年目の12年6月に支配下登録。昨季まで通算65試合出場で63打数8安打4打点。内野手登録ながら出場は外野のみ。右投げ左打ち。172センチ、68キロ。推定年俸1300万円。