日本ハム栗山英樹監督(55)が、執念の采配を実らせた。7投手の積極的なリレーで、最後は復活をかける守護神増井を2イニングで起用し、勝利をたぐり寄せた。貯金を今季最多タイの2とし、首位ソフトバンクとのゲーム差を5に縮めた。

 髪はしっとりと汗ばみ、乱れていた。激闘の覇者になった栗山監督が、瞳を潤ませていた。3点を先行され、追い付いた。勝ち越し、また追い付かれたが、延長10回レアードが決勝2ラン。土壇場で振り切った。実りある逆転劇に、悦に入った。「感動した。久々に野球って面白い、と思った。負けてもいいんだよ。でも命がけの戦いをやらないと、いけないんだ」。

 大胆かつ細心のタクトで、劣勢を切り開いていった。2回に4連打で3失点したルーキー左腕の加藤を瞬時に、見切った。本来は先発だが、中継ぎ待機させたバースを2回1死三塁の難局で投入。追加点を防ぎ、相手に傾きかけた流れを止めた。3点を追う6回に代打谷口が、同点3ラン。突如、現れたラッキーボーイの予感がする伏兵を、そのまま中堅の守備へ。やや不振だった陽岱鋼をベンチへと下げる勝負手を打った。

 ハートを揺さぶり、もくろむ反攻のキーマンも蘇生させた。1点リードの9回に同点にされた増井。再度、2点差へと広げた延長10回のマウンドへ送った。1安打も無失点でしのいだ。「2点リードしてくれたので、絶対に抑えたかった」。今後の戦いを、にらんで再出発した守護神の復活の息吹も注入した。修羅場を託すピースとしての本能も、目覚めさせた。

 最大のライバルから最高の1勝で、4カード連続勝ち越し。栗山監督は大きく息をつき、巻き返しへ決意表明した。「勝負するよ。勝負していく。勝負にいくんだ」。信頼する兵を躍らせた。逆襲への布石を打った。【高山通史】