広島が混戦から頭ひとつ抜けだした。好調な打線がこの日も機能。12安打9得点で2位巨人に快勝し、2・5ゲーム差をつけた。火をつけたのは1番田中広輔内野手(26)。6回に試合を決定づける3ランを放つなど3安打。1回には先制点を呼ぶ左前打で出塁し、盗塁も決めた。

 声をからせた赤い雨がっぱの後押しを受け、広島田中の打球はグングン伸びていった。肌に張りつくような小雨を切り裂き、そのまま左翼スタンド最前列に吸い込まれた。1点リードの6回1死一、三塁。カウント2-2から6球目だった。巨人山口の外角直球をジャストミート。試合を決める3号3ランだった。

 「食らいついていこうと思った。チームとして、追い込まれたら逆方向という意識もあった。まさか入るとは思わなかったですが」

 雨雲同様、打線も停滞していた。1回に田中の左前打、二盗から2点を奪うも、2回以降は沈黙。走者を出しながらも残塁を重ねた。立ち直る巨人田口と懸命に粘る広島野村。少しのきっかけで逆転されてもおかしくない状況だった。初球はセーフティースクイズを仕掛けるなど食らいつき、最後は一振り。小さく見せたガッツポーズに、野手の苦しみがこもっていた。

 東海大相模、東海大、JR東日本とエリート街道を歩んできた男だが「僕は人に恵まれていた」と言う。どこを切り取っても「球拾いとか、雑草抜きとかはやったことがないんですよね」。周りを見渡しても、厳しい練習こそあれ、理不尽を受けたことはない。先輩に囲まれ、野球に向き合う時間が田中を作り出した。

 この1発からビッグレッドマシンガン打線がさく裂し、12安打9得点。3カード連続の勝ち越しを決め、貯金は今季最多の6。2位巨人と2・5ゲーム差まで広げた。「貯金はいくつあってもいい。どんどん増やしたい」と田中。2万5793人を笑顔で帰路につかせた。【池本泰尚】

 ▼広島が2連勝し、2位巨人とのゲーム差を2.5に広げた。混戦の続くセ・リーグで首位と2位チームに2.5差がついたのは、4月1日(1位巨人、2位阪神)以来で最大ゲーム差でもある。