慶大の今秋ドラフト候補右腕・加藤拓也投手(4年=慶応)が、10安打10奪三振10四球の4失点完投でリーグ通算20勝目を挙げた。5回以外は毎回走者を出しながら、140キロ台後半の直球を中心に力投。打っても2回に今季1号の先制2ランを放ち、早大戦の連敗を5で止めた。早大は14残塁の拙攻で、11年春以来10季ぶりの5位が確定した。

 「トリプルテン」の怪投? だった。9回、45人目の打者を右飛に抑えた慶大・加藤拓は、マウンドで両膝に手をついて動かなかった。10安打10奪三振10四球で178球完投。「大学の中で一番しんどかった。何とか試合が終わってよかった」。投打にフル回転した最速153キロ右腕は、疲れきった表情で胸をなで下ろした。

 最大の試練は6回だった。ストライクが入らない。先頭から2者連続四球。「投げ方が分からなくなった」。犠打で走者を進められ、2点二塁打を浴びた。2死後には、この回4個目の四球で満塁。「考えても仕方ないので、捕手のミットに思い切り投げるだけだった」。フルカウントから、こん身の直球で見逃し三振を奪った。「これだけ長い間、体の使い方が分からなかったことはなかった」。ベンチには戻らず、キャッチボールで体の突っ込みを修正して立ち直った。

 四球や球数が多くても、勝ち星を積み重ねてきた。区切りの20勝に「入学した時は想像もしていなかった。驚いています」と喜びをかみしめた。「四球を出さなくても、負けるときは負ける」。1年春から56試合に登板する不動のエースが、宿敵から意地の1勝をもぎとった。【鹿野雄太】

 ◆加藤拓也(かとう・たくや) 1994年(平6)12月31日、東京都生まれ。小2から捕手として野球を始める。小4から中野リトルで投手も務める。中野区立第八中では杉並シニアに所属し、関東選抜入り。慶応高(神奈川)では捕手として1年からベンチ入りし、2年から投手。175センチ、90キロ。右投げ右打ち。血液型O。