巨人阿部慎之助捕手(37)が救国の獅子となる。「日本生命セ・パ交流戦」開幕戦となる今日31日のオリックス戦(京セラドーム大阪)での今季1軍初昇格に向けて30日、大阪入りしチームに合流した。キャンプで右肩痛を抱え、約2カ月にわたり2軍生活を余儀なくされた。いよいよ迎える“開幕”は打線の中軸でDHでの先発出場が濃厚だ。リーグ5位と苦しむチームを「みんなを助けたい」という熱き思いを携え、よみがえらせる。

 “開幕前日”の阿部の心は危機感と使命感に満ちていた。交流戦開幕の地、大阪入りする前にジャイアンツ球場に立ち寄り、身支度を整えた。意気込みについて聞かれ「ないよ。打つ」とシンプルの極み。「昔10連敗して2つ勝って、また9連敗したからね。その経験を踏まえて頑張る」と06年を回想した。7連敗を止めた現状も経験則から楽観視しなかった。

 変わらず、打線の貧困ぶりは深刻だ。チーム打率、平均得点は12球団ワースト。ここに阿部という極上のピースが戻る。ビジターのオリックス戦はDH制が採用され、右肩の回復途上にある阿部がここにはまる。

 高橋監督は「オーダーはこれから考えるよ。戻ってきたからには使う? そうだね」と起用は明言した。ギャレットの不振による降格から4番を固定しきれない中、復帰初戦で打線の中軸を任せる構えだ。

 本職の捕手は慎重に状態を見極める。交流戦2カード目の日本ハム戦は一塁手での起用も選択肢に入る。捕手は短いイニングから段階的に上げていき、スタメンマスクの時期を模索していく。起用は多岐にわたるが、大黒柱は「何でもやる気持ち。とにかく貢献したい」と腹づもりを固めている。

 チーム51戦目で迎える“開幕戦”。プロ16年目で最も遅い。責任を痛感しているからこそ、心は獣のように飢えている。

 阿部 今年は最初から言っていたように、ナルニア王国の(ライオンの王)アスランになるよ。みんなを助けたい。ガオーッてほえながらね。

 児童文学を原作に、映画化された「ナルニア国物語」。子どもたちの冒険が中心のファンタジーで仲間の窮地を、ライオンの王であるアスランが救う。物語を自らに重ね合わせた。巨人の中心で雄たけびを上げる。【広重竜太郎】

<阿部の故障経過>    

 ◆2月1日 宮崎キャンプはS班で独自の調整。

 ◆17日 2次沖縄キャンプで1軍に合流。

 ◆20日 DeNAとのオープン戦にDHで出場。

 ◆22日 右肩の違和感で再び別メニュー調整。

 ◆3月5日 フリー打撃で右肘に死球受け、練習を切り上げる。

 ◆12日 2軍開幕戦に捕手で出場。

 ◆16日 ヤクルトとのオープン戦に捕手で出場、2ランを放つ。

 ◆21日 右肩コンディション不良により、開幕2軍が決定。

 ◆4月8日 イースタン・リーグに指名打者で、3月20日以来の実戦復帰。

 ◆15日 二塁送球ができる状態に戻していたが、再び右肩に違和感。

 ◆5月25日 イースタンDeNA戦にDHで実戦復帰。

 ◆28日 イースタン西武戦で本塁打。8回からマスクもかぶる。

 ◆29日 同戦で4打数4安打2本塁打。

 ▼ナルニア国物語 1950年代にイギリスの文学者C・S・ルイスが執筆した児童文学シリーズ。05年に第1巻「ライオンと魔女」が映画化され、これまでに計3作が公開された。ナルニア国の王「アスラン」によって、ナルニアの世界に導かれた子どもたちの冒険が中心に描かれ、「ライオンと魔女」では1度は息絶えたアスランが生き返って、白い魔女を倒した。アスランはライオン。