エースが6月マジックを阻止した。ロッテ涌井秀章投手(30)が2試合連続完投で7勝目。ソフトバンク打線に9回につかまり12安打6失点(自責4)も、1人で投げ切った。伊東ロッテでは就任1年目13年6月以来の最多貯金14をもたらした。今カードで2敗すれば日本ハムの結果次第で、ソフトバンクに史上初6月中の優勝マジック点灯の可能性があった。逆転Vを諦めない気持ちを示した。

 ベンチ裏の涌井はきまり悪そうだった。第一声は「今日はコメントなし」と苦笑い。無理もない。9回に2死満塁を招き、今宮、上林の連続長打で4点を失った。7点リードが、一気に3点差。静かだった自軍ブルペンが、にわかに忙しくなった。最後は柳田を遊ゴロで締めたが、伊東監督も「内心、ヒヤヒヤした」と言う終わり方だった。

 完投にこだわった。前カードは西武との打ち合い続き。益田が3連投など中継ぎ陣はフル回転した。だから、8回を終え、110球、9-2とリードでも交代の打診を断った。ひそかに、この日をイメージしていた。交流戦を終え、先発ローテが再編。それまでの金曜から、週の頭に変更された。その結果、球宴までの3週間で2試合ソフトバンク戦に登板できる。「意識しないわけ、ないでしょう。ソフトバンク戦は勝つことが大事。ここにぶつけられた意味を考えて調整してきた」と使命感に燃えた。

 しかも、ただ勝つだけじゃない。打線が5回までに9点を取ってくれた。こてんぱんに圧勝するつもりで、大量援護にも気持ちを切らさず、打ち取っていった。「8回までは、そうだったんですけど。ぴしゃっといけるはずが」。そう言いながら、また苦笑いした。

 3連勝でお返しだ。チームは、交流戦前最後のカード、5月27日からのソフトバンク3連戦で全敗した。伊東監督は「借りを返したい。まず1つ」ともくろみを口にした。初戦を取り、ゲーム差は6・5に縮まった。涌井は「オールスターまでに3ゲームまで縮めたら」と、逆転優勝の青写真を描いた。ソフトバンクとは7月12日に再戦予定。「2週間後、カモメのお祭りなんで」と決意した。その日は、千葉移転25周年を記念した球団初の東京ドーム主催試合。この日と同じ舞台だ。【古川真弥】