楽天足立祐一捕手(26)がチームを支えている。正捕手嶋の故障離脱により、5月21日にプロ初の1軍昇格。その後は6月27日までに27試合に出場し、先発出場は25試合、交流戦4位の原動力にもなった。めぐってきた好機を手放さないオールドルーキーに、活躍の秘密を聞いた。

 「僕の中で一番はピッチャーに気持ち良く投げて欲しいんです」。投手陣の多くは足立の印象を「投げやすい。コミュニケーションを取ってくれる」と口をそろえる。先発ならばイニングごとに球の感想を伝え、次の配球をともに練る。中継ぎ、抑えならばブルペンに顔を出して声をかける。松井裕は「9回に足立さんの打席がなければブルペンに来て、話してくれる。1年目で緊張があるはずなのに、積極的に距離を縮めてくれる」と細かい気遣いにうれしそうだ。

 18日、午後2時試合開始のDeNA戦。午後5時を回った最終回、足立の爪は白く輝いていた。「シールです。最終回だけ貼ったんです。日が落ち始めて、投手がサインを見えなくなるのが嫌だった」。東京ドームでの巨人戦では、照明の加減で足元の影が濃くなることも把握し、サインが見やすいように初回から貼っていた。「もし見えなかったらと思うのも嫌ですし、準備不足で投手に嫌な思いをさせたくない」。

 大阪に妻と1歳の長女は置いてきた。1年目が勝負だと自らを追い込んでいるからだ。「開幕当初は捕手2人態勢で今年は2軍かなと思いましたけど。でも伊志嶺さんも戻ってきたし、嶋さんも戻ってくる。毎日が勝負です」。凜(りん)と気高く、細やかに亭主を立てる姿は昭和の母のようだ。【島根純】