虎の大黒柱が仁王立ちした。阪神メッセンジャーの闘志がほとばしる。7回、2死一塁で大島に適時二塁打を許し、1点を失うと香田投手コーチが歩み寄る。球数は130球。金本監督もベンチを出て、球審に交代を告げようとしたときだ。マウンドの様子をうかがい、笑顔で指をさす。お前に任せた-。右翼ポール際から出てきたブルペンカーがバックして逆戻り…。首脳陣も交代を検討するなかで、続投志願を受け入れた。

 その後、2死満塁とピンチは広がる。香田コーチは再び、ブルペンへの直通電話で話し出す。周囲の心配をよそに、直前の打席で被弾していたビシエドを迎え、助っ人右腕の闘志が燃えさかる。変化球を織り交ぜながら、大砲を追い詰め、カウント2-2からの6球目。こん身の152キロ高め直球で空を切らせた。指揮官の心意気に応える、144球目の意地だった。

 メッセンジャーは「あの場面、何としても7回を乗り切りたいということで、監督にお願いした。終わらせてくれてありがたい」と感謝した。金本監督は「ビシエドにいかれたら、僕はどうしようかなと…。彼がどうしても『このイニング、責任を持ちたい』と。彼の意思を尊重しました。ホントにヒヤヒヤしました」と胸をなでおろした。

 本調子ではない。速球の制球が利かずに、今季最多の球数となった。中5日のマウンドでも無理をしいたのは理由がある。金本監督は「ドリスがいない。そういう意味で少しでも長いイニングを」と舞台裏を明かす。守護神が肘を負傷し、今日31日に出場選手登録を抹消されることになった。結果的に、救援陣の一大事を救ったメッセンジャーは「知らなかった。状況はどうであれ、マウンドに上がれば、あのイニングを抑えて終わりたいんだ」と胸を張る。7回2失点の力投で今季9勝目。気概でつかんだ白星だった。【酒井俊作】

 ▼メッセンジャーが通算奪三振数を1069とし、郭泰源(西武)と並んで外国人史上2位となった。なお最多は郭源治(中日)の1415奪三振。