意地の1発が絶対王者を追い詰めた。ソフトバンクとの首位攻防第3ラウンド。日本ハム大谷翔平投手(22)は「3番DH」で先発し、3点を先制された直後の初回無死二塁から同点に追いつく13号2ランを放った。右手中指の皮がめくれた影響で、当初予定していたこの日の登板を回避。バットで大仕事をやってのけた。ソフトバンクに3ゲーム差と最接近し、鷹撃墜の射程圏に入った。

 確信した。感情が右の拳に集約された。走り始めて4歩。大谷が“プロ最短”でガッツポーズをつくった。「一方的な展開になりそうな雰囲気があった。すぐに追いつけたのは良かったと思う」。初回に3点を奪われた直後の攻撃。岡、西川の連打で1点を返すと、大谷の13号2ランで試合を振り出しに戻した。打者3人でわずか5球での同点劇だった。

 1回無死二塁。打席に向かう頭は、整理されていた。「フォークをボールにするんだろうな」。ソフトバンク岩崎の初球。球種を絞り、待った。思った通りのフォークが「たまたま浮いてきた」。141キロの半速球となり、ストライクゾーンへ。迷いなく振り抜いた。打球は左中間席に突き刺さった。昨季までのソフトバンク戦は、先行して逆転される試合が目立った。「今までは逆パターンでやられていた。ソフトバンク相手でもしっかり(逆転)できるのは、チーム状態がいいんだと思う」。自身の1発が、引き金になった。

 西武とのナイター3連戦だった先週、大谷は朝早く起床して、宿舎近くのジムに足を運んだ。試合を終えて自室に戻ると午後10時をまわっていたが、早寝早起きで時間をつくり、トレーニングに励んだ。栗山監督は「だから(投打)2つともできる」と言う。街中にある普通のジム。窓ガラスの向こうからは、大谷に気がついた一般のファンが立ち止まって視線を送ってきたが、騒がしい“外野”をよそに、大谷は黙々と体を鍛えたという。

 右手中指の皮がめくれた影響で、投手としては足踏みしているが、バットではめざましい活躍を続けている。打者に専念した今カードは2本塁打で貢献。チームも7月を17勝4敗と驚異的なペースで終えて、最大11・5もあった首位ソフトバンクとのゲーム差は3に縮まった。「(ソフトバンクとは試合を)やっていても強さを感じます。1試合1試合落とさないように勝ち抜くことが大事。トータルで勝ち越している(10勝6敗1分け)のはいい傾向だと思う」と手応えを口にした。1週間後には、敵地福岡で再戦する。大きなヤマ場がやってくる。【本間翼】

 ▼日本ハムがソフトバンク戦に2勝1敗と勝ち越し。6月20日DeNA戦からの連続カード勝ち越しを11に伸ばした。7月は17勝4敗で終了。日本ハムの月間17勝以上は61年9月18勝(5敗2分け)64年8月17勝(10敗)に次いで52年ぶり3度目。月間貯金13は61年9月に並び最多となった。一方のソフトバンクは7月11勝11敗で、日本ハムは7月だけで6・5ゲーム差を詰めた。