打席の広島菊池は顔色を変えずに決めた。「一塁手がめちゃくちゃ前に出てきていた。あっち(一塁方向)に打とうと思った」。同点の6回無死二塁。3球はいずれもバントの構え。サインはバントだったが、カウントは2-1となった後の4球目。相手の守備隊形を見てバスターに出た。しかし増井のボールは予想に反して内角高めに来た。「内角に来たので。たたいて引っ張るしかなかった」。反応で、思っていた方向とは逆に打ち返した。

 たたいた打球は遊撃定位置方向へ。しかし、サインプレーで二塁方向に走っていた遊撃手の逆をついて、外野へ抜けた。「僕というよりも、広輔が反応して走ってくれていた」。とっさの菊池の判断にも、田中は素早く反応。今季は菊池の欠場などを除く140試合で1、2番コンビを組み、141試合で二遊間コンビ。心の内は読めていた。

 思いがけない失策をはね返す一打でもあった。1点リードの4回2死一、二塁の守備。バットを折られた大野の打球は不規則な回転で菊池の前へ。懸命にバウンドを合わせようとしたが後逸。二塁走者の本塁生還。「止めたかったんですが…」。昨季まで3年連続ゴールデングラブ賞の守備の名手は、今季最多安打を獲得したバットで、やり返した。

 タナキクのコンビで勝ち越し点を奪うと、黙っていないのがマルだ。直後の無死二塁。ノーサインでバントを試みた。シーズンで犠打は1度だけ。不意を突くプレーに動揺したか、増井は一塁へ悪送球。犠打と失策が記録されるプレーで追加点。丸は「相手も無死二塁より1死三塁の方がやりにくいだろうなと思った。転がしさえすれば大丈夫と思った」。初戦に続き躍動したタナキクマル。頼もしい3人が広島にはいる。【池本泰尚】