プロ野球の12球団合同トライアウトが12日、甲子園球場で開催された。1万2000人の観客が見守る中、65選手が参加。ヤクルトから戦力外となった新垣渚投手(36)は、カウント1-1からのシート打撃で打者3人をピシャリ。沖縄水産時代に高校生の甲子園最高球速をマークした剛腕が、最後のアピールを行った。

 あの夏から19年を経たマウンドに、ベテランとなった新垣が立った。最初の打者深江を1球で追い込むと「三振を狙った」という宝刀スライダーはワンバウンド。139キロ直球で二ゴロに打ち取った。続く原は直球で二ゴロ、渡辺を二直に仕留めた。「今日で終わってもと、悔いなく投げられた。もっとスピードをアピールしたかった。思ったより出なかったけど、今の僕にできる投球はできた」。直球の最速は高校時代から11キロ遅い140キロも、全7球に魂を込めた納得の3者凡退だった。

 逸材がそろう松坂世代でも、高校時代は世代NO・1の球速だった。立場は各自変わったが、和田(ソフトバンク)から激励メールが届くなど今も絆は深い。「和田も帰って来て、杉内(巨人)も来季はやると思う。自分ももう一花咲かせたいけど、自分ではどうしようもない。家族もいるし迷惑を掛けられない」。期限を今月末に設定し、NPB限定でオファーを待つ。

 青春の思い出が詰まった甲子園が、最後の登板となる可能性もある。「ここで僕は高校生から始まりましたし、いい思い出がある。まだ最後になるか分からないですけど」と達観した表情を浮かべた。【斎藤直樹】