史上初の二刀流受賞だ! セ・パ両リーグのベストナインが25日に発表され、日本ハム大谷翔平投手(22)が投手と指名打者の2部門で同時受賞した。投手として2年連続2度目、指名打者では初受賞。プロ野球担当記者らの投票で選出するベストナインは、大谷の規格外の活躍を受け、今季から投手と野手の重複投票が可能となっていた。新規定適用1年目でのダブル受賞で、希代のスーパースターが新たな歴史を生み出した。

 また、誰も歩いたことのない道を切り開いた。史上初となるベストナインの投打ダブル受賞を果たした大谷は、選手会納会が行われた北海道・登別市内のホテルに駆けつけると「選ばれるとは思っていなかったので、うれしいです。どちらも規定には乗っていないので…。ただチームは優勝しましたし、そういったところを評価してもらったのかなと思っています」。控えめに喜びを語った。

 今季は投手で10勝を挙げたが満足はない。開幕から5戦連続で白星なし。球宴前に右手中指のマメをつぶしたことに端を発して、約1カ月半は登板から遠ざかった。マウンドに復帰後は、リーグ制覇を決めた9月28日西武戦で1安打完封。胴上げ投手になり、クライマックスシリーズでは日本最速の165キロもマークしたが「いろんなことがあったシーズン。良いところ悪いところがはっきりしていた」と振り返る。

 野手で打率3割2分2厘、22本塁打と軒並みキャリアハイの数字を残したが「比較的いい打席も多かったですけど、もっともっとやらなきゃいけない」。レベルアップの必要性に駆り立てられている。新たな勲章にも「もっともっと頑張りたいなという気持ちになりましたし、頑張らなきゃいけないなという気持ちになりました」と、喜びに浸ることはなかった。

 今季は先発登板日に打線に組み込まれる「リアル二刀流」で、ポストシーズンを含めて10試合出場した。日本シリーズ第1戦での黒星以外は、全てチームを勝利に導いた。そんな大谷の規格外の活躍がベストナイン選出の規定を変更させ、自らの存在価値を証明するダブル受賞。「来年も取れるように頑張りたいと思います。また、個人的に納得できるシーズンにしたいです」。真っすぐに前だけを見つめて、使命感を新たにした。【木下大輔】

<大谷の異例選出アラカルト>

 ◆2部門トップ 66年パ・リーグで国貞泰汎(やすひろ=南海)が二塁手で72票、三塁手で49票を獲得し、両位置で最高得票となった例がある。この時は規定により票数の多い二塁手で受賞。三塁手は次点のロイ(西鉄=44票)が繰り上げで選ばれた。

 ◆規定不足の指名打者 大谷は規定打席443に61打席足りなかった。指名打者を表彰するようになった75年以降、同部門の規定打席不足は10年福浦和也(ロッテ)に次いで2人目。

 ◆規定不足の投手 大谷は投球140回で規定投球回に3回足りず。規定不足の投手が受賞したのは98年佐々木主浩(横浜)以来2人目、先発投手では初。

 ◆ベストナイン投票規定の変更 昨年までは同一選手を複数のポジションで投票することを禁じてきた。大谷が投打で活躍する中、セ、パ両リーグから選出を委嘱されているプロ野球記者会は、投手と野手との重複投票を認めると決定。従来の規定でも複数ポジションで最多得票なら指名打者に限り重複選出が認められていたが、重複投票がなければ票が割れ、両方で選ばれない可能性もあった。