今季、広島の25年ぶりリーグ制覇に大きく貢献した赤松真人外野手(34)が28日、マツダスタジアムで会見を開き「胃がん」を患っていることを公表した。15日に個人的に受診した医療機関で判明。初期段階で生死には関わらないが、手術が必要だという。来年1月上旬に広島市内の病院で手術を受ける予定。復帰時期は見えないが、球団もサポートを約束。希代のスピードスターは、前例のない闘いに挑む。

 スペシャリストが、前例のない闘いに挑む。赤松は「胃がん」を公表した上で、はっきりと言った。

 「復帰をして、野球ができる状態になるのかは分からない。でも早く治して、前例になるようにしたい。前向きにしか考えていない」

 暗さはない。努めて明るく振る舞った。公表に踏み切ったところにも、強い決意がにじんでいた。

 やせた様子もなく、顔色もいい。赤松自身も「自覚症状もないし、まさか自分が、という思い」。判明したきっかけは毎年個人的に行う健康診断。今回は今月15日に受け、「今年はのんでみようか」と初めて胃カメラ検査に臨んだことで発見につながった。「出来たてホヤホヤではないけど、早くてよかった」。1月上旬に広島市内で約6時間の切除手術を受ける。がんは幸い初期段階で、生死には関わらないと言う。

 ただグラウンドへの復帰には、幾多のハードルを乗り越えなければならないことも分かっている。手術は必須で、胃の半分は切除する。状況次第では全摘出もあり得るという。「術後体調不良になったりとか、筋肉に力が入らないこともあるかもしれない」。手術内容で左右されるため復帰のメドもたっていない。パフォーマンスが完全に戻るかも不透明だ。

 緒方監督や一部の選手には自身の口から説明した。家族の反応を問われると「ふとした瞬間に気を使っている。僕はそういうのは嫌。普通通りにしてもらえれば。でもこういうときしか気を使ってもらえないのでうまく利用しようかな」と舌を出した。向き合う覚悟を固め、最後まで深刻な顔は見せなかった。

 鈴木球団本部長は「またここを駆け回る姿を想像しながら待ちたい。球団としても出来る限りのサポートをしたい」と約束。好守の外野手で今季12盗塁をマークするなど、チームの躍進を支えた。選手生命の危機に直面したセ・リーグ王者の切り札は言った。

 「待っていてください」

 背番号38は、必ずグラウンドに戻ってくる。【池本泰尚】

 ◆赤松真人(あかまつ・まさと)1982年(昭57)9月6日、京都府生まれ。平安(現・龍谷大平安)-立命大を経て04年ドラフト6巡目で阪神入団。05、07年ウエスタン・リーグ盗塁王。07年オフ、阪神にFA移籍した新井の人的補償で広島へ移籍した。182センチ、75キロ。右投げ右打ち。夫人と2男。