由伸ノックでアゲアゲ巨人だ! 巨人は29日、東京ドームで練習を行い、31日の中日との開幕戦(同)に向けて調整。高橋由伸監督(41)は指揮官としては異例となるシートノックを敢行した。オープン戦は最下位に沈んだが、自ら先頭に立ち、開幕目前のナインのテンションを高めた。

 現役時は天才打者と称された高橋監督が、やや不慣れにノックバットを振るった。無理もない。初体験のシートノック。内外野に苦闘しながら打球を打ち分けた。

 緩い打球が飛べば選手から「ヘ~イ!」とツッコミが入る。締めはノッカーの技量を問われ、最大の見せ場でもある捕手への飛球。指揮官が打たずに終わろうとすると周囲は「キャッチャーフライは?」と逃がさない。苦笑いしながら挑むと、こすったような低空の飛球がフラフラ上がり、小林が難なくキャッチして一応? 1発で成功。笑いとともに90スイング、20分間の「由伸ノック劇場」が終了した。

 報道陣に士気が上がったと聞かれると「別にそんなので変わらないでしょう。捕飛も成功? 高く上がってないけどね」と自虐的。それでも再度、士気向上の声に「そうなったらいいね」と笑った。

 プロ野球の監督がキャンプの特守などでノックを行うのは見慣れた光景だが、実戦形式に近いシートノックでのノックは珍しい。高橋監督は春季キャンプで阿部、村田、坂本勇に計347球を浴びせるなど2度、特守でノックを行った。井端内野守備走塁コーチから「シートノックもどうですか?」と提案され、1週間前に再度「開幕前のシートでは?」と最終オファーがされた。高橋監督も意を決し、長竿のバットを振った。

 ノックを通じた“会話”は選手の心にも伝わった。開幕二塁手が有力な中井は「盛り上がりましたね。(監督自らのシートノックは)高校野球みたいでした」と懐かしんだ。左翼手で先発濃厚な岡本は最後は一塁手に入り、本塁前のバントを想定したゴロを転がされると、グラブトスではなくダイビングタッチ。「長野さんに言われたので…」とユニホームを真っ黒にして爆笑を誘った。

 オープン戦は9年ぶりの最下位。だが高橋監督が現役時代も「記憶にない」という指揮官シートノックで開幕へアゲアゲムードを演出した。【広重竜太郎】

 ◆シートノック 各選手が守備位置につき、その位置でノックを受けて、捕球、送球の練習をすること。ただのノックより、連係プレーなどより実戦的な練習ができる。

<主な監督ノック>

 巨人長嶋茂雄監督 97年、西武から移籍の清原にマンツーマンで55分間268本のノック。00年にも広島からFA加入の江藤に223本。79年オフには、地獄の「伊東キャンプ」で当時若手の篠塚、中畑らを鍛え上げた。

 巨人原辰徳監督 07年、FAで加入の小笠原にノック。11年の沖縄キャンプでは、坂本らに1時間約400本を浴びせ続けた。

 中日落合博満監督 09年、北谷キャンプで二遊間コンバートに挑戦する井端、荒木に約1時間バットを振った。07年には中村紀の入団テストで1時間以上もノックを行っている。

 DeNA中畑清監督 14年のキャンプ初日に自らノック。1月に頸椎(けいつい)ヘルニアの手術を受けたばかりだったが、ノックから信頼関係が生まれるとの持論から、愛情ノック。

 星野仙一監督 中日監督時代は度々ノックバットを振った。阪神監督時代は就任1年目の02年6月、首位陥落直後に甲子園で初めて実施。井川、安藤に約20分で100球。