紛れもないスラッガーの放物線だった。

 初回。2死二、三塁。阪神の5番中谷将大外野手(24)が真ん中に入ったフォークをたたき上げた。高々と舞い上がった打球は、日の落ちきらない甲子園の左翼席に吸い込まれた。4球目直球をフルスイングしたが、左翼ポールを切れる特大ファウル。「打ち直し」の1球目を一撃で仕留めた。序盤からお祭り騒ぎの5号3ラン。手に残る感触は格別だった。

 中谷は「みんながつないでくれた先制のチャンスだったし、大きな当たりのファウルの後に、集中して打つことが出来た。打った瞬間、感触も良かった」と胸を張った。出場13試合で自己最多の5発を放つ量産態勢だ。生え抜きの右打者の20発以上は06年浜中治(打撃コーチ)以来出ていない。

 金本監督は「今は貯金を増やすことしか考えていない。若手もベテランもみんなで次の試合を勝っていく。きっちりした野球を目指している。明日、勝てば勝ち越しが決まる。明日も全力で勝ちにいきたい」と力強く話した。

 中谷は、秋山、糸原と同世代でお立ち台に上がった。「手応えは?」の問いかけに「いや、ないっす。必死なんで。おごらずやっていきたい」と口元を引き締めた。必死に、がむしゃらに。チームは3連勝で貯金11。がっちり首位を固めた。【桝井聡】