<西武12-3ソフトバンク>◇19日◇西武ドーム

 渡辺西武に優勝マジック28が点灯した。2位ソフトバンクとの直接対決。先発石井一久投手(34)が新球チェンジアップを使って7回4安打8奪三振無失点の好投で9勝目、打線は14安打で12点をたたき出し大勝した。昨季5位で26年ぶりBクラス転落の苦汁をなめた西武が、渡辺久信監督(43)の1年目で、優勝に向かって大きく踏み出した。

 石井一が新たな武器をマスターして完全復活した。外角に沈むボールが、右打者のタイミングを外す。4回、同じ軌道で伸びる144キロ直球に、ファウルで粘っていた小久保のバットは空を切った。新球チェンジアップを操り、ソフトバンク打線を7回無失点。4安打無四球と三塁を踏ませない完ぺきな仕事で、マジック28を点灯させた。

 9勝目を挙げた笑顔には、安堵(あんど)感もにじんだ。「前回よくなかったので、今日は初回から気持ちをこめて投げました。切羽詰まった状態で頑張ったのが良かったのかもしれないです」。6回に本多の打球が左足を直撃したが、続投を直訴。大量援護にも気持ちを切らさず、反撃の糸口すら与えずに7回を投げ抜いた。いつもマイペースな石井一が「気合」の言葉を連発するほど、この登板にかけていた。

 前半戦は首位独走の原動力となったが、夏場に入って勝てなくなった。フォームが乱れ、腰にも負担がかかり、一時期はどん底だった。「幅を広げようと思って」と取り組んだのがチェンジアップだった。メジャー時代にも投げたことはあるが、それとはまた違う。握りや投げ方はすべて独自で研究。スライダーやカットボールなど右打者の内角に食い込む変化球に、緩急という武器を身につけた。球種を増やすことで、さらなる進化を求めた。

 復調を願っていた渡辺監督は「すばらしい投球。キレも変化球も良かった。これでひと安心」と胸をなで下ろした。優勝請負人として呼び寄せたFA左腕が、スランプを脱出。5度目挑戦でようやく優勝マジックを点灯させたが、ベテランの経験は、これからの戦いにこそ欠かせない。石井一は「ここからが大事。シーズンのいいところで存在感を出していきたい」と指揮官の期待にこたえるように、力強く言いきった。【柴田猛夫】