<阪神1-2広島>◇13日◇甲子園
左翼金本がフェンスにへばりついた。思いきりジャンプしたが届かない。甲子園を埋め尽くしたファンの悲鳴が、阪神藤川球児投手(28)の体に突き刺さる。帰ってきた守護神はぼうぜんと立ちつくすしかなかった。
延長10回2死一塁。カウント1-1から、4番栗原への3球目だ。136キロフォークが真ん中に入った。失投だった。完ぺきにとらえられ、左翼フェンス直撃の決勝二塁打となった。
藤川
申し訳ない…。体の状態?
大事なところで出ている以上はね。申し訳ない。フォアボールもあった。とにかく抑えないといけなかった。
2日の巨人戦。同点の9回に登板し、坂本に決勝弾を浴びた。「自分の最高のパフォーマンスを見せられない」。その翌3日、右ひじ痛のため1軍登録を抹消された。その日から最短10日間での1軍復帰だけを目指してきた。大歓声を背に、11日ぶりのマウンドまで走った。延長10回。登板した4投手、いや仲間全員の思いが詰まったバトンを受け取った。
前日12日だった。鳴尾浜での最後の練習後、実は甲子園クラブハウスまで足を運び、山口投手コーチらに顔を見せた。この日の練習前には、真弓監督を探して新室内練習場へ。「帰ってきた?
そんな良いもんじゃない。勝つしかない。もっと自分たちが頑張らないといけない」。苦しいチーム状況の中、10日間のリハビリを許された。好投で周囲に恩返ししたかった。
とはいえ、一筋の光明が見えたのも事実だ。全26球中、14球が“火の玉ストレート”。打者の手元で浮き上がる、らしい直球が目立った。先頭の1番東出はこの日最速150キロで空振り三振。2番石井も149キロで空振り三振に仕留めた。試合前、リハビリ中に患部をチェックした杉田トレーナーは「肩、わき腹がはって、ひじが下がって、ボールがシュート回転していた」と以前の状態を説明していた。だが、復帰戦での直球は威力十分だった。
1敗は痛い。しかし「2つ三振を取ったのも真っすぐだった。球にキレがあった」と真弓監督。信頼は揺るぎない。「まだまだ試合はある」と球児も闘志を燃やした。猛虎の反撃は守護神の完全復活なしではありえない。【佐井陽介】
[2009年5月14日10時37分
紙面から]ソーシャルブックマーク




