<ヤクルト2-1阪神>◇15日◇神宮

 大観衆の中で復活を果たした右腕は「すごく幸せな気分でした」と、感極まって言葉を詰まらせた。ヤクルト・ユウキ投手(29)は、阪神打線を5回1失点と好投。勝ちこそつかなかったが、完全復活を印象付けた。

 オリックス時代の昨年2月に右肩を手術し、同オフに突然の戦力外通告を受けた。「手術やリハビリよりも11月…。精神的に本当に苦しかった」。肩さえ治ればやれる自負があっただけに、目の前が真っ暗になった。トライアウトや育成選手も経験して、ようやくこの日を迎えただけに「あのとき(戦力外)のことを思い出したら、このマウンドで投げられているから大丈夫」と、気持ちは楽になった。

 07年8月28日ソフトバンク戦(スカイマーク)以来の1軍マウンドで、最初は「足が震えました」と緊張した。1回に先頭赤星に左前打されると、1死一、二塁から金本に先制左前適時打。それでも続く新井を中飛、メンチも二飛に仕留めて1失点でしのぐと、その後はテンポの良い投球でアウトを積み重ねた。直球は140キロ台後半。2回以降は四球で走者を1人出したのみで、高田監督も「慣れてスタミナも付いてくれば、十分戦力になります」と新戦力を絶賛した。

 「暗いウエート場で練習してたので」と、まぶしいカクテル光線を浴びて投球できる喜びをかみしめた。復活までを支えた周囲への感謝の思いは、登場テーマ曲にMONKEY

 MAJIK「ただ、ありがとう」を選んだことで表現した。神戸で離れて暮らす妻と今年1月に生まれた長女から、朝にテレビ電話で激励を受けて勇気ももらった。「2人の存在がなければここまで来られなかった。今、泣きそうなくらいうれしい。今日は帰って1人で泣きます」と、照れくさそうに言った。

 11日に育成から支配下選手登録されたばかりだ。「まだ1回投げただけ。1つでも多く勝って恩返ししたい」。チームは4年ぶりの貯金6。頼もしい右腕が、今後も全力投球を誓った。【松本俊】

 [2009年5月16日8時10分

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