<ソフトバンク9-5中日>◇30日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンク多村仁志外野手(32)に待望の今季1号が飛び出した。復帰6試合目となった中日1回戦(福岡ヤフードーム)に、今季初めて7番から6番に打順を昇格させて出場。8回の第4打席に平井からバックスクリーン左へソロ本塁打を放ち、試合を決定づけた。3回の守備では右翼から本塁への好返球で先制点を防ぐなど攻守に大活躍。オープン戦で右肩を負傷し、2軍調整を経て22日に今季初めて1軍に合流したばかりの大砲が、チームの交流戦首位固めに貢献した。

 スラッガーに8回、待望の1発が出た。多村は、中日平井が投じたフォークを振り切った。「フェンス直撃かと思って全力で走ったけど、みんな止まっててびっくりした」。バックスクリーン左へ吸い込まれていた。昨年4月13日西武戦(福岡ヤフードーム)以来413日ぶりのアーチ。「本当に気持ちよかった」。大砲は満面の笑みで、通算128発目の感想を口にした。

 苦しみ抜いただけに、格別な1発だ。3月25日の阪神とのオープン戦で二塁帰塁の際に右肩を負傷。開幕を1軍で迎えることなく、2軍でのリハビリ生活が続いた。「鳥越(2軍)監督や復帰に協力してくれたファーム(2軍)の方々に感謝したい」。

 守備でも流れを引き寄せた。3回2死二塁。井端の右前打を猛然とダッシュして捕球すると、右翼から無駄のない動きで好返球。「ドンピシャでしたね」と田上のミットに収まった。走者平田が憤死。先制点を与えなかった。直後に味方が3点先制。多村は「あれは井出さん(外野守備コーチ)の守備配置と、田上のブロックのおかげ」と頭を下げた。

 仲間だけでなく家族への感謝もある。「関東遠征で自宅に帰れたのが大きかった。家族といると安心する」。前日29日にチームは関東遠征から福岡に戻った。しかしチームの配慮により、本隊とは別行動で横浜市内の自宅で静養。出発の日に9歳と3歳の娘に「(福岡へ)行かないで」と言われることが辛かった。だからテレビを通じて最高の1発を届けた。

 メジャーでは打撃、長打、走塁、肩、守備面ですべて秀でた選手を「5ツール」と表現される。多村の信条はこれにファッションを加えた「6ツール」。服装や髪形は当然。バットに刻まれる名前を、ブロック体にするか筆記体にするかまで、メーカー担当者と真剣に考え抜く。今回の1軍合流時には、気分転換を理由に登録名を「仁」から「仁志」へ変更。金色に染め上げたばかりの髪を、この日は茶色に変えて登場した。

 「ホームランすごい当たりだった」と秋山監督は喜んだ。この日クリーンアップは無安打。主軸がノーヒットの試合は今季5度目だが、白星は初めて。5点差を追いつかれながら突き放したことも収穫だ。2週間以上も連敗せず、貯金を最多タイの3に戻した。この日横浜が敗れ、31日にソフトバンク○、広島●、横浜●の条件で交流戦優勝マジック12が点灯する。打率4割7分4厘を誇る多村の活躍で、交流戦連覇をグッと引き寄せた。

 [2009年5月31日10時36分

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