<中日5-4巨人>◇5日◇ナゴヤドーム

 中日川井雄太投手(29)が巨人打線に10安打を浴びながら6回4失点と踏みとどまり、ハーラートップタイとなる開幕から無傷の8連勝を飾った。開幕8連勝は84年都、97年山本昌、01年野口、06年佐藤充、08年吉見に並ぶ球団記録。すべて日曜日に勝ち星に挙げる川井は、サンデー男ぶりも見せつけた。昨年までプロ1勝の5年目左腕は、首位巨人追撃に向け先発ローテーションでフル回転する。

 しかられた少年のように恐縮しながら、川井はベンチを出た列の先頭に立った。引き上げてくるナインを迎え、勝利のハイタッチを重ねながら、何度も頭を下げた。「野手のみなさんのおかげです」。6回10安打4失点の乱調。それでも同僚吉見、ヤクルト館山に並ぶハーラートップの8勝目を挙げた。開幕からの8連勝は球団タイ記録だ。周囲の祝福がこそばゆかった。

 苦しんだ。スライダー中心に組み立ててコーナーをついたが、巨人打線はわずかなミスを見逃してくれない。初回に1失点。5回には鈴木、小笠原、ラミレスに3連打されるなど3失点。ボールが高めに浮いたところをとらえられた。それでも気力を振り絞って1点のリードを守ったまま救援陣につないだ。「あと1本」は許さなかった。

 5年目の軟投派。昨年までプロ1勝男の大変身は、意識改革のたまものだ。昨年4月16日巨人戦で初勝利を挙げた後、勝ちを意識するあまり思うようにボールを投げられなくなった。その後9試合に先発して未勝利。自己嫌悪に陥った。今季は名前を「進」から「雄太(ゆうだい)」に変え心機一転。勝ち星を意識の外に置くよう自分に暗示をかけてきた。低めに投げることだけ考えてきた。

 もう1つ自らに課しているのは、絶対に手を抜かないことだ。2回から4回の味方の攻撃中。通常は2アウトをとられてから始める肩慣らしのキャッチボールを、ベンチに引き上げるなり始めた。「打席が回ってきたら1球も投げないでマウンドにいかないといけない。やるとやらないのは全然違う」。そんな姿勢も野球の神様に通じている。

 それでも、連勝しているつもりはない。6月14日の日本ハム戦(札幌ドーム)は6回11安打6失点と乱れたが、打線に助けられ勝ち星が転がり込んだ。「ボク、あそこで負けているじゃないですか」。勝ち星はオール日曜日だが、そんな巡り合わせにも無関心。「たまたまローテーションがそうなっているだけ。チームが勝てばいいんです」と意に介さない。

 森バッテリーチーフコーチは開幕直後、川井について「若手?

 いくつだと思ってるんだ。そんなこと言ってるトシじゃないだろう」と話した。そんな期待にも応え、プロ9勝のうち巨人から3勝目。遅咲きの29歳は、いまや竜投に欠かせない戦力だ。【村野

 森】

 [2009年7月6日11時40分

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