<中日2-1広島>◇11日◇ナゴヤドーム

 まさに勝敗を分けたビッグプレーだった。中日が1点リードで迎えた8回2死二塁の守備。セットアッパー浅尾が広島栗原に痛打された。打球は左前に弾んだ。左翼和田は捕球するとテークバックの小さなフォームから送球した。きれいな回転で2バウンドしながらホームベースへ。二塁走者梵との勝負。タイミングはセーフだった。同点か-。そう思った瞬間、谷繁元信捕手(38)が梵を“ワナ”にかけた。

 本塁へ突入する梵を左足でブロックする間に、捕球してタッチ。「アウト!」。審判のコールを聞く前に谷繁はガッツポーズしていた。浅尾を救い、広島との守り合いを制したベテラン2人の巧妙な連係だった。

 「タイミングとしては完全にセーフでした。うまく谷繁さんがブロックしてくれたおかげです」。ヤクルト・ガイエルに次ぐ、6個目の捕殺を記録した和田が振り返った。送球よりも早くホームに達した梵に最後のタッチをさせなかった谷繁の勝利でもあった。ただ、谷繁はそのブロックを可能にさせたのが和田の送球だと証言した。

 「べんちゃん(和田)はいつも上品な球を投げてくれる。だから、あの場面でも(走者と送球を)両方、見ることができた」。

 和田の送球は曲がらない。「レーザービーム」と評されるイチロー(マリナーズ)のようなスピードはないが、ほとんど一直線にホームへ向かっていく。「僕は肩が強くないんで、スピンの効いたボールを投げないといけない」。捕手から外野手に転向した02年以来、和田が磨き続けてきた技術だ。

 どんなに強肩でも返球がそれれば、捕手はブロックどころではない。8回の場面、谷繁は走ってくる梵と、ボールの両方を安心して見ることができた。だからこそ、巧妙なブロックが生まれた。昨年11個の捕殺を記録したセ・リーグ捕殺王は、だれあろう和田だ。決して強肩ではない。ただ、和田の本当の実力を知らない走者はホームベース手前で泣くことになる。打撃に劣らない中日の堅い守備が、今後の優勝争いでも威力を発揮する。【鈴木忠平】

 [2009年7月12日12時24分

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