<楽天0-5ソフトバンク>◇11日◇Kスタ宮城

 楽天野村克也監督(74)が、球団から来季の契約を結ばないと通告され、4年目の今季限りで退任することが決まった。16日からKスタ宮城でのクライマックスシリーズ(CS)第1ステージで対戦するソフトバンクに完封負け。前日10日の日本ハム24回戦(札幌ドーム)での代打起用を批判したトッド・リンデン外野手(29)の出場選手登録を容赦なく抹消。試合後、島田亨オーナー(44)から名誉監督への就任要請を受けたが、態度を保留した。後任監督候補は広島マーティー・ブラウン監督(46)が最有力となっている。

 無数のフラッシュの中、すべてを悟った笑みを見せた。試合後、野村監督は島田オーナー、米田球団代表ら球団幹部と約40分の会談を終えると、残留を望む約100人のファンに向かって両手を上げた。「(名誉監督は)しばらく考えさせてもらう、と言った。いずれにしても、今年で楽天の監督は終わりです」。静かに会談の内容を振り返ると、そのまま「野村コール」が響く方へと歩み寄った。普段はしないファンとの握手を、自ら手を伸ばして次々に手を握った。「ありがたいね。ファンは認めてくれている。考えてみれば、74歳までよくユニホームを着させてもらったよ」と、静かな笑みを見せた。

 ひそかに抱いていた残留の夢もかなわなかった。レギュラーシーズン最終戦は、寂しい思いを隠して指揮をとっていた。試合前、4年間ですっかり慣れ親しんだ監督室で今季限りを通告された。「米田代表に『来年もあるのか』と聞いたら『ありません』と言っていた。クライマックス(シリーズ)に出て、解雇されるとは思わなかった」と振り返った。シーズン終盤に入り「言うなら早く言ってほしい」と話していた。本心は聞きたくなかったひと言を、あえて自ら問いただした。

 最後は静かに幕を引くことを選んだ。試合後の会談で同席すると思われた沙知代夫人はひと足先に球場を後にしていた。球団側からはっきりとした言葉を聞けないうっぷんから、一時は過激な発言も飛び出していた。だがこの日は「クビだったら早く言ってくれと。オレの言い方も悪かった」と反省した。

 痛んだ心をえぐる事態も起きていた。この日、7月から加入し、サヨナラ打2本と活躍していたリンデンを抹消した。前日10日の日本ハム戦で左腕武田勝を苦手とする助っ人をスタメンから外した。逆上したリンデンから帰り際に皮肉をこめて「アリガトウ!」という言葉を浴びせられると、怒りが頂点に達した。「これ以上ない嫌みのひと言を言ったんだ。これを許すわけにはいかない」と降格を即決した。16日から始まるCSを考えれば貴重な戦力。再登録は21日以降でCS第1Sは出場できなくなり、監督批判という事の重大さから、第2Sに進出しても起用することはない。

 要請された名誉監督就任は態度を保留した。「名誉監督だって。長嶋と同じだよ。次にだれが監督をやるか分からないけど、そばにうるさい存在がいるとね。次の監督のことを考えると、しゃしゃり出るわけにはいかない」と語ったが、4年間手塩にかけたチームへの愛着もあり、前向きに検討していくとみられる。

 CS進出を決め、続きが生まれた野村監督の最終章。「ファンはありがたい。胴上げで死ぬのが、おれの夢だからな」と、また笑みを浮かべた。ラストシーズンは、74歳の夢をかなえる道だ。【小松正明】

 [2009年10月12日9時13分

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