エースの自覚が球を投げさせた。ソフトバンク杉内俊哉投手(29)が、異例のキャンプイン前日投球を行った。1月31日、チームは午後の便でキャンプ地の宮崎入り。それでも左腕は福岡空港集合前にわざわざ西戸崎室内練習場(福岡市東区)に出向いて、キャッチボールに汗を流した。

 今季にかける思いが凝縮されていた。移動日にもかかわらず、午前中に福岡ヤフードームに練習へ向かった。しかし本拠地は国家試験の会場として使用され、立ち入り不可能。今度は愛車で約40分をかけ西戸崎室内練習場まで移動した。到着後、室内で2年目左腕の怜王を見つけると「キャッチボールした?」とパートナー役を頼んだ。

 寮に隣接する室内練習場で練習を行った選手は杉内を除けば、摂津ら寮生の6人だけ。思いもよらぬエースの登場に、キャッチボール相手の怜王も緊張しっぱなしだ。そんな若手に杉内は「(自主トレで教えた)チェンジアップは投げてる?」などと声をかけながら、最大50メートル近くまで距離を伸ばし1球1球丁寧に球を投げ込んだ。

 2年ぶりの開幕投手、目標の21勝へ向けてキャンプ初日から飛ばす。これまでも2月1日のブルペン投球を予定していたが、あくまで「暖かければ」の条件付き。この日はきっぱり「(気温が)低くても入る。そのためのキャッチボールだから」と本番を見据えた。

 通算79勝で並ぶ斉藤の今季中の復活が厳しくなった。入団時から尊敬する先輩の苦悩は痛いほどわかっている。杉内が真のエースとなるため、結果と背中でチームを引っ張る。【倉成孝史】

 [2010年2月1日12時6分

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