<中日3-1ソフトバンク>◇13日◇ナゴヤドーム

 ソフトバンク多村仁志外野手(33)が、豪快な1発で交流戦男ぶりを見せつけた。4回表。中日チェンの146キロ直球に力負けせず、バックスクリーン右へ今交流戦1号、今季7号ソロをたたき込んだ。2ボールから直球を狙い澄ましての一打。ただ、鷹ファンをスカッとさせた先制弾にも言葉は少ない。「終わってしまったこと。仕方ない」。チームの敗戦に笑顔なく、移動バスへ乗り込んだ。

 交流戦導入初年度の05年に12本塁打するなど、交流戦での戦いはお手のものだ。08年は故障で全試合を欠場したが、これで交流戦25発目。06年まで横浜でプレーしていたとあって、セ球団に知人も多く「交流戦ではあいさつも忙しいよ」と話すなど楽しみな舞台でもある。だが、そんな発奮材料だけでなく、独特の繊細さが引き出した一打でもあった。

 4種類のバットを使い分ける多村が1打席目に握ったバットは、ヘッドの先端をくりぬいたツートンカラーのタイプ。2打席目も同じタイプながら黒1色のバット。わずかな感覚の違いにこだわる研ぎ澄まされた感性が豪快アーチを生み出した。

 6回の3打席目に左足に自打球を当てた影響で、8回裏の守備から交代した。だが、交代の理由については無言を貫いた。故障に泣かされたスラッガーだが、きっと15日のヤクルト戦(神宮)で何事もなかったようにスタメンへ名を連ねるはずだ。打線が沈黙し始めた今、多村自身がバットでチームを引っ張る自らの使命を分かっているに違いない。

 [2010年5月14日11時28分

 紙面から]ソーシャルブックマーク