<西武4-8阪神>◇10日◇西武ドーム

 スカッとしたで、アライさん!

 阪神新井貴浩内野手(33)が、チームの天敵、西武先発石井一をひと振りで粉砕した。初回、1点先制し、なお2死一塁の場面で、真ん中ストレートをバックスクリーンへズドン。8号2ランで主導権を奪った。4回にも左前打で追加点を呼び込むなど、大技小技を駆使。西武戦の連敗を6で止めた。交流戦は残り2戦。勝率5割超えは、絶対にあきらめない。

 新井がバットで「兄」の威厳を示した。普段は金本の弟分だが、この日は圧倒的な存在感を見せつけた。

 マートンの2試合連続先制打で1点を奪った初回。なおも2死一塁で、5番の新井に打席が回った。直前には、アニキと慕う金本が空振り三振。「何とかね(したかった)」。追加点を奪えれば、試合の主導権を握れる。打席に入る新井の頭の中は、冷静だった。

 2球で追い込まれたが、そこから4球連続ファウルで粘る。7球目。真ん中にきた137キロの直球を見逃さず、バックスクリーンに運んだ。4試合ぶりとなる8号2ラン。「どうかな(入るかな)という感じだったけどね」。現役3人目となる阪神戦通算30勝に王手をかけていた西武先発石井一に、大きなダメージを与える1発だった。

 前日9日の西武初戦。新井は初回、そして9回と得点圏に走者を置きながら、いずれも凡退してチームはサヨナラ負け。試合後に「(1試合を通じて)甘い球は1球しかなかった。それをファウルにしてしまった」と、悔しさをあらわにしていた。2日続けて同じ失敗は繰り返せない。打線の中核を担う男は一夜にして、反省を生かした。この日の一発は、ファウルで粘りながら待った絶好球。「ミーティングでも(早めに勝負してくると)あったから」。心理戦でも勝った男は表情を変えることなく、悠々とダイヤモンドを1周した。

 もう一つ、打ちたい理由があった。同じく前日9日。中日に在籍する弟・良太が楽天戦でプロ初本塁打を記録した。プロ野球界での兄弟本塁打達成は史上23組目。そんな弟の新たな“門出”を、自らのバットで祝うことができなかった。試合後に弟の初本塁打を知った新井は、夜食に舌鼓を打ちながら「オレも打っていれば、もっと親を喜ばせることができたのにな…」と残念がっていた。1日遅れとなったが、兄としての役目をしっかり果たした。

 「新井の追い込まれてからの本塁打が効いた。何とか(交流戦を)勝ち越して終わりたい」。真弓監督を称賛させた男の一発。これで今交流戦最終カードとなる明日12日からのロッテ2連戦に連勝すれば、チームは2年ぶりの交流戦勝ち越しが決まる。この1勝は単なる1勝ではない。【石田泰隆】

 [2010年6月11日11時19分

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