<楽天5-4ロッテ>◇8日◇Kスタ宮城

 トッド・リンデン外野手(30)の「みそぎアーチ」で楽天がロッテに3連勝だ。解離性大動脈瘤(りゅう)のため5月中旬から約1カ月間入院していた楽天野村克也名誉監督(75)がこの日、元気になってから初めてKスタ宮城に現れた。大ボスがVIPルームで見つめる試合は中盤から小刻みに追い上げる展開。1点差の8回1死二塁、助っ人がバックスクリーンへ逆転2ランを放ち、派手にひっくり返した。「今日のホームランを野村さんにささげたい」。殊勝な態度で、穏やかな顔で、意味深長なセリフを残した。

 昨年のクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ直前だった。起用を巡る監督への侮辱行為→強制抹消でCS不出場→半そで短パンで謝罪→監督激怒→スーツ姿で再謝罪という劇画さながらのスリリングな展開で、リンデンは一気にクローズアップされた。文化の違いから起きた誤解で、元来きまじめな男は気に病んでいた。今季のファーム調整中、イースタン巨人戦で野村克則コーチに会った。「いろいろ話して。『頑張れ』って」。野村家の人情が心にしみた。

 本塁打の直前、ノムさんが帰路に就いてしまっていたことは痛恨の極み。逆転を伝え聞くと「オレが来て負けた、って言われなくて良かったよ。仙台に見に来て、負けなくて良かったよ」と愛情こもった言葉が並んだ。やんちゃな助っ人が思いをぎっしり詰めてかけた放物線。病み上がりの名誉監督を穏やかにさせる特効薬になった。【宮下敬至】

 [2010年7月9日12時11分

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