<横浜7-5巨人>◇17日◇横浜

 大きく弾んだ打球が、一塁の頭を越えた。5-5で迎えた8回2死満塁、横浜山口俊投手(23)は久保の146キロの直球を思い切って振った。「正直ホームランを狙っていました。来たボールを1、2、3で振りました」。チームの守護神が、値千金の勝ち越し2点適時打を放った。「よもや彼が打ってくれるとは…。9回のことばかり考えていた」と、尾花監督が目を丸くするほど、想定外の展開だった。

 周囲の思惑とは対照的に、山口は気合が入りまくっていた。試合前の休憩室でドラマ「スクールウォーズ」のDVDを見た。チームに気合を入れようとベテラン佐伯が用意したものだった。「あれを見て、今日は気合が入りました」。尾花監督は続投か代打か迷った場面だったが、山口は「ヒーローになって、新聞に載るチャンスだと思った」と準備ができていた。

 最下位に低迷する横浜でただ1人、オールスターに選出された。「チームの代表。これからは先輩方に甘えるのでなく、自分がしっかりしていかないと」と表情を引き締める。実際、5年目の今季に向け、オフから自覚が芽生えていた。昨季までは三浦と行っていた自主トレを卒業、若手同士で行った。5年目とはいえチームを引っ張る覚悟があった。

 本業のピッチングでも2回無失点の完ぺきなリリーフを見せた。元幕内力士の谷嵐を父に持ち、お立ち台では藤江としこを踏む、お得意の相撲パフォーマンスを披露した。「気持ちがいい」。梅雨明けした青空に、山口の笑顔が光った。【鈴木良一】

 [2010年7月18日8時18分

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