<阪神8-7中日>◇1日◇甲子園

 悩めるマートンがトンネルを抜けた。阪神マット・マートン外野手(28)が3点を追う2回、1点を返し、なお一、三塁の好機で、右翼線に執念の2点三塁打。自身14日ぶりのタイムリーで同点に追いつき、相手の暴投で勝ち越しのホームを踏んだ。球宴明けから打撃不振に苦しんできたが、復活を証明。3日からの巨人戦(東京ドーム)では、本来の打撃でチームを引っぱる。

 中日右翼の小池がフェンスに激突する直前、グラブから白球をこぼした。大歓声の中心でマートンが走る、走る。三塁ベースに左足からスライディングし、勢いそのまま立ち上がった。両手をパシッとたたき、久々の感覚に酔いしれた。

 マートン

 ここのところチャンスで打てていなかったから、ランナーを一掃して三塁まで走れて、気持ちが良かった。

 “らしい”1本は、2回に生まれた。3四死球から好機をつくり、2点差に迫って迎えた2死一、三塁の場面。中日岩田の外角直球に逆らわず、右翼線に運んだ。走者2人をかえす同点三塁打。さらに相手の暴投で勝ち越しのホームを踏んだ。7月18日ヤクルト戦(神宮)以来、8試合、14日ぶりの適時打。長打も同じく8試合ぶりだ。珍しく調子を落としていたが、焦りはなかった。

 マートン

 ホッとしたというのはない。(不調は)イッツ・ベースボール。決してハッピーでもないし、満足もしていないけど、世界一の打者と呼ばれるプホルス(カージナルス)でも26打数で1安打しか打てない時もあるんだから。僕はそこまで気にしないよ。

 虎の安打製造機。打つことが当たり前となり、打たなければ記者に囲まれる立場になった。そんな時、思い返すのは米メジャー時代の体験だ。「向こうでもダメな時ほど1番取材を受けたよ」。カブス時代、不振に陥った時には約40人の記者がクラブハウスまで押しかけてきたという。「打った時はほとんど誰も来なかったのにね」と苦笑い。周囲の動きに一喜一憂しない。だから、安定した成績をキープできる。

 次の甲子園でのゲームは8月31日横浜戦。これから1カ月近く、遠征中心の日々が続く。家族大好き助っ人にとってはつらい現実だが、もちろん落ち込むこともない。「米国は長い遠征でも12日ぐらい。本拠地から遠い場所での遠征というのはなかった。でも甲子園は歴史があるし、高校野球があるのも知っている。家に帰って自分の部屋で寝るのは良いことだけどね」。冗談めかして「問題なし」を強調。がっちり首位を堅守して1カ月後、笑顔で聖地に戻ってくる。【佐井陽介】

 [2010年8月2日11時53分

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