<ソフトバンク7-2オリックス>◇11日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンク小久保裕紀内野手(38)が、天敵撃ちだ。自身もチームも苦手とするオリックス近藤から初回に千金先制打。4回には4連打に貢献し、近藤KO劇の主役を張った。主将にけん引された打線は、連敗中1度も越えられなかった「4点の壁」を突破する13安打7得点の爆発。背番号9が西武追撃への先陣役となる。

 形はどうでもよかった。小久保が笑った。「いやあ、必死やったわ。相性よくなかったし(近藤がヤフー)ドーム大好きって公言してたし。バットに当てる。それだけやったわ」。持ち味の豪快スイングではなかった。外角いっぱいの直球を、コツンとはじき返した。だが、大事なのはオリックス近藤の出ばなをくじき、先発和田に先制点をプレゼントしたこと。1回2死二塁での右前適時打は、軽く振った一打。が、打線爆発の扉を開く、大きな意味を持つ一打に間違いなかった。

 チームは前回対戦こそ土をつけたが、近藤にはこれまで19試合の対決で5勝12敗と苦しんでいた。小久保自身、11打数1安打(打率0割9分1厘)とやられていた。プロ17年目のベテランの意地とプライドを込めた千金打を、秋山監督も「初回に技術を見せてくれた」とたたえた。4回には4連打を紡ぐ左前安打。天敵右腕を4回途中に引きずりおろす立役者となった。

 特別な試合でもあった。この日球場に04年7月に亡くなった高畠導宏さん(享年60)の親族が来場した。小久保は「奥さんが来ているよ」と意識していた。高畠さんは南海、ロッテ、ダイエーなどでコーチを歴任し、小久保がホークス入団時に師事した恩師。モチベーションは最高潮に高まっていた。

 多くの人に支えられ、ここまでプロ人生を歩んできた。その経験を後輩たちに惜しみなく伝える。ベンチに退いた終盤には今宮、福田を横に呼んで、オリックスの8回の攻撃を参考にしながら走塁のポイントを説いた。主将を務め、後輩に助言を送り続けるからこそ、背番号9が打てば、打線はつながる。13安打7得点で6連敗中全試合4点に終わった「4点の壁」にもピリオドを打った。

 月に1度の血液検査を受け、乳酸値測定するなど体調管理に誰より気をつかう。それでも、前日はフリー打撃を途中で切り上げるなど、決して万全ではない。そんな体でも、1回にアウト覚悟で盗塁を試みた。理由は「多村も近藤と相性がよくなかった。ヒットがなかったのを知っていたので、追い込まれた時点で、アウトになっても、もう一度リセットして多村が打席に立てる」。自分を犠牲にできるスピリットに、勝利の女神はほほえんだ。「勝つって難しいし、やっぱり気分いいな」。10日ぶりの白星とともに、背番号9に笑顔が戻った。

 [2010年8月12日12時2分

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