<阪神22-8広島>◇25日◇京セラドーム大阪

 アニキが打って歴史的な大爆発だ!

 2点差と追い上げた7回、金本知憲外野手(42)が右翼席へ満塁本塁打をたたき込んで逆転した。このセ・リーグ最年長グランドスラムに刺激され、復刻版の黒虎ユニホームを身にまとった新世紀「ダイナマイト打線」が目覚めた。7回は7点、8回は桧山進次郎外野手(41)の3ランなど10点の猛攻で、球団新記録の1試合22得点で大勝。連敗を4で止め、一夜で首位を奪回した。

 金本が阪神を救った。一塁ベースを回るときから、右の拳はがっちりと握りしめられていた。「興奮しました、久々に。あんまりガッツポーズをするのは好きじゃないんですけど、自然と出ちゃいました」。42歳の主役ですら、高ぶる感情を抑えきれなかった。低空弾丸ライナーが、右翼3階席のフェンスを直撃すると、スタンドは総立ちになった。今季12号は逆転の満塁弾。最高のドラマを目撃したファンは、誰彼となく喜びを分かち合った。「今日のゲームを救ってくれました」。真弓監督も、スターの一振りに感服した。

 金本

 なかなかいい場面で打てない試合が続いたので、今日みたいな場面で打ててうれしかった。感触も、当たりも良かったけど、逆転満塁ホームランで、というのがね。連敗中だったのでうれしかった。

 心なしか、お立ち台でも声が震えていた。7回に1点を返し、なおも2点差の1死満塁。左の大島が投じたフルカウントから126キロの真ん中低めのチェンジアップをフルスイング。通算打点を1452とし、衣笠祥雄氏を抜いて史上単独10位に躍り出た。

 ダイヤモンドを回り終えると、新井が両手を広げて待っていた。素直に飛び込むのもためらいがあり、新旧の4番は小突きながらじゃれ合った。6月19日の横浜戦(横浜)で金本は4番新井を一喝した。イニングの先頭だった新井は、カウント1-3から左翼スタンドへ1発を見舞った。だが、打ったのは明らかなボール球。喜々としてベンチに戻った新井に問いただした。「つなぐ気はないのか?」。勝利だけを追い求め、6年間、阪神の4番を張った男は、後継の4番打者に物足りなさを感じていた。

 2カ月がたち、そこには忠実に教えを守る「4番」の姿があった。劇的な1発の直前だ。無死満塁で、新井はカウント1-3から押し出しの四球を選んだ。1回に犠飛、2回には併殺と満塁で快音が出なかった悔いもあったろう。1点をもぎ取っても、新井はニコリともしなかった。

 金本の1発で打線が1つになると、黒虎は一気によみがえった。今季最多の20安打で、球団記録を塗り替える22得点。連敗を4で止め、1日で首位を奪い返した。それでも巨人、中日とのし烈な戦いは続く。2度のリーグ優勝を知るベテランは、最後に栄光をつかむ秘訣(ひけつ)を問われ「優勝するんだという強い気持ちだと思います」。頼れる鉄人の1発が、再びチームを動かし始めた。【鎌田真一郎】

 [2010年8月26日9時37分

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