横浜ベイスターズ売却先として、親会社のTBSホールディングスが住宅設備大手の住生活グループを軸にしていることが1日、分かった。同社はトステムなどを傘下に持つが、知名度が低く、球団取得はブランド価値を高める好機ととらえている。同ホールディングスの財津敬三社長(65)も交渉が進んでいることを認めた。TBSは放送事業が不振で、毎年二十数億円を補てんする球団経営が重荷になっていた。交渉が順調に進めば、11月18日のオーナー会議で株式変更が申請される見通しだ。

 横浜の売却先として浮上した住生活グループは、傘下のトステムがJリーグ鹿島のスポンサーになるなど、スポーツへの協賛に熱心な企業として知られる。グループのブランド価値の向上を課題としており、プロ野球球団を所有することにより知名度をアップさせる狙いがある。同社は「現時点で当社が開示すべき事実はありません」とHP上でコメントを発表したが、ある幹部はこの日「前向きに検討したい」と話し、球団取得への意欲を見せた。

 一連の報道を受け、横浜の親会社TBSホールディングス財津社長は「皆さんがあれだけ書いている。何もなかったというわけではないが、今は(情報を)開示する時期ではない。何か進んだときにでも話します」と住生活グループへの身売り交渉を認めた。

 球団を買収した02年当時と違い、近年はスポンサー減からプロ野球の地上波放送が激減。今季横浜主催の巨人戦ナイターはわずか1試合で視聴率も6・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷した。「放送権料が低くなったことが大きな問題。当初は優良コンテンツとしてみていたが、地上波の視聴率が落ち込んでいる」と財津社長。10年3月期連結決算が23億円の純損失に陥り、民放テレビキー局5社の中で唯一の赤字決算。本業との相乗効果も薄れ、経営も振るわない球団が負担になっていた。

 このタイミングで身売り問題が浮上してきた背景には、本拠地の横浜スタジアムとの契約問題もある。収入の割合に応じて支払われる球場使用料は年間で約8億~10億円とされ、経営の大きな負担となっていた。定期的に更新してきた両者の契約は、今年で10年契約が満了し、来季以降の契約について交渉をしている最中。有利な条件に改善したい球団側が、1年契約を申し入れており、現状ではまとまっていない。プロ野球誘致を目指している新潟県の部分的な移転も含め、球場問題は重要な焦点となる。

 財津社長は交渉期限を「時間は関係ない」としながらも「年をまたぐとキャンプも始まる。選手を動揺させることは避けたい。そういった意味では早い段階の方がいいと思う」と早期決着を望んだ。野球協約では、球団の譲渡は原則として11月30日までに実行委員会とオーナー会議での承認が必要。親会社のトップが交渉を認めたことで、身売り問題は一気に加速していくことになる。

 [2010年10月2日11時6分

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