フリーエージェント(FA)権を保有しているソフトバンク多村仁志外野手(33)が「大トリFA宣言」の決意を固めたことが8日、分かった。FA権行使期限最終日の16日に権利行使へ踏み切る方針を固めた。すでに球団には意思を伝え、宣言残留を含めた交渉を進めていく。FA手続き期間が8日からスタートした。

 多村がFA宣言の期限いっぱいとなる16日に権利行使を表明することが分かった。関係者は「期限ギリギリにFA権を行使する方向になっているようだ」と語り、FA宣言締め切り日に手を挙げることが確実になった。

 すでに球団と複数回、交渉を持っている。これまでに多村側は宣言残留を視野に入れて権利行使する可能性があることを球団に伝えている。

 期限最終日にFA宣言する最も大きな理由は、ソフトバンクとの残留交渉をスムーズに、そしてフェアに運ぶためと思われる。争点は契約年限で、複数年契約を望む多村と単年をベースにする球団側に開きがあるとみられる。

 FAの日程は17日に宣言選手がいっせいに公示され、18日から全球団との交渉が解禁となる。ただそれ以前にFA意思を表明する選手が各球団から現れる見通し。このオフはソフトバンクもFA補強を積極的に検討していて、誰が手を挙げるのか見極めて、獲得方針を固めていく段階。多村の宣言が遅ければ遅いほど、ソフトバンクは獲得を狙う選手とのバランスを見ながら残留交渉の条件を整える準備ができる。

 多村もこれまで「チームに愛着がある」とし、宣言=他球団移籍ではない点を強調している。宣言まで時間をかけた方が多村側、球団側の双方にプラスになると考えているようだ。

 もともとFA権行使に気持ちは傾いていた。1度、宣言すれば再取得まで4年かかる。多村は来季34歳。他球団の評価を聞くチャンスを得る一方で、ホークスに骨を埋める覚悟もある。選手としては最も脂が乗った時期。だからこそ、FA選手として他選手と横一線の状態で評価してもらうことを望んでいるのだ。

 現在は都内のジムで練習を重ねている。16日までに球団から残留交渉要請があれば対応するケースも出てきそう。球団側も宣言残留を認めるスタンスで、FA権行使に支障はない。

 プロ16年目の今季は140試合に出場して、打率3割2分4厘、27本塁打、89打点。チーム内では打撃3部門トップで、故障に弱いとされてきたレッテルも返上。数字に表れにくい守備面でも球団内では外野手でトップの評価を得ており、FA宣言した後は他球団が獲得に乗り出す可能性はある。多村の交渉が16日の宣言を境に、一気に動き始めるに違いない。

 [2010年11月9日10時35分

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