破天荒コーチの誕生だ。今季で現役を引退した前楽天の藪恵壹投手(42)が16日、古巣の阪神側と交渉、正式に2軍投手コーチ就任の要請を受けた。第2の人生を歩む藪だが「自分の興味」としてなんと今後も練習を続け、何歳まで140キロ超を投げられるか挑戦するという。あくなき探求心は指導にもつながると思われるが、目標は55歳で140キロ…ってホンマかいな!?

 2時間余りの会談を終え、柔和な表情で感想を語っていた藪から、仰天発言が飛び出した。「現役を続けるつもりはない。(コーチ契約の)サインをした時点で終わり」と言ったあとに、真顔でこう続けたのだ。

 「でも、個人的に何歳まで140キロを投げられるか、自分の体でやってみたいと思っている。実際に村田兆治さんも投げているけど(自分も)そこまでできるか、これからトレーニングをしながらね。やり方によっては55歳まで140キロを投げられると思う」

 来年からコーチに就任する人とは思えない野望をぶち上げた。昨年、マスターズリーグで59歳にして140キロを計測した元ロッテの鉄腕に挑戦したい-。

 「コーチ業に生きる?

 それとはまた別だけど。僕の勝手な興味の範囲。投げることに関しての」。指導法の1つという考えは否定したものの、長寿スピード王への挑戦は、いかに本気で野球に取り組んでいるかの証明でもある。

 「昔、一緒にやっていた福原、安藤とかまだまだやれる。難しい年齢に入っているけど40歳を1つの目標にしてやってほしい。先発にこだわるのか、ベテランのここぞのときにショートイニングで抑えるのか。どちらもチームには必要だし、彼らにはどちらもできる力があるから」

 仰天発言に連動して、力を発揮しきれずにいる選手の再生を1つのテーマに掲げた。身をもって体を鍛え、投球のメカニズムを追究していく。実際にコーチ業と「兼任」するのは至難の業と思われるが、そんな新コーチの哲学は、復活にかける男たちの心にも強く響くに違いない。

 南球団社長らとの会談では契約条件も出されたが、ほぼ野球の話に終始した。日米メキシコなどで蓄えた知識や、投球のメカニズムなどを熱く語った。サインは17日以降に持ち越し、まずは野球人・藪の紹介に時間を費やした。

 「コーチ(業)が優先。選手に迷惑をかけられない」と、本業に支障のないことが大前提なのは重々承知している。若手が投げる横で、親子以上に年の離れたコーチがビュンビュンと140キロ超え-。そんな光景を藪コーチは夢見ているのかもしれない。【柏原誠】

 [2010年12月17日11時13分

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