前楽天の藪恵壹投手(42)が17日、今季限りでの現役引退を正式表明し、阪神2軍投手コーチに就任した。西宮市の球団事務所で推定年俸1500万円で1年契約を締結。7年ぶりの古巣復帰で、球団初の元大リーガーコーチが誕生した。

 藪コーチ

 契約書にサインするまでは現役にこだわってたけど、した時点でなくなった。身の引き締まる思いです。

 第2の野球人生の始まりの日、ネクタイはチームカラーの黄色だった。願いは、11年在籍し、海外挑戦後も指導者として招いてくれた球団への恩返し。モットーは自ら手本を示して教える“投げるコーチ”だ。

 藪コーチ

 来年から日本もボールが変わる。その特性を生かしながら、実際に投げて試したい。肩肘が元気なうちは、しっかりトレーニングをして投げたい。

 12球団統一球は藪自身も未知の世界。だが教える前に、自身が投げて感覚をつかむ必要がある。前日も「55歳で140キロ」を目標に掲げたばかり。特徴を把握してから、選手の目の前で投げて見せるつもりだ。球界でも前代未聞といえる、文字通りの生きた教材。「そのうち体を動かしに行きます」。早くも実地への準備も計画。近日中に鳴尾浜を訪れ、“始動”することも予告した。

 藪コーチ

 向こうは日本で言う真っすぐではなくて、ムーブメント。ボールの動きですね。今までと違った視点で、投球術が広がる指導ができると思う。

 統一球による新魔球の開発も狙っている。メジャーの主流は「動く真っすぐ」。ブレ球でバットの芯を微妙に外す。握りを変えるだけで真っすぐが何種類もの球種に化ける。習得した自身も42歳まで現役を張る武器になった。だが、統一球ならこれまでと変化も違うはず。藪流大リーグボールには、虎投飛躍の夢が詰まっている。

 向上心は旺盛。帰ってきた元エースが斬新な指導で新風を吹き込む。

 [2010年12月18日11時1分

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