若手捕手よ、投手陣をメシに誘いなさい──。阪神藤川球児投手(30)が18日、捕手陣にユニークなハッパを掛けた。自らが、今季限りで引退した矢野燿大氏(42)とのグラウンド内外のつきあいを通して、成長したことを強調。狩野、小宮山に「投手の信頼をつかめ」とゲキを飛ばした。

 藤川にとって、理想の捕手とは矢野氏だ。グラウンド内外で尊敬している。若手が同じことをできるとは思っていないが、少しでも近づいてほしい。そんな思いに突き動かされていた。

 「野球選手の前に、社会人であれと教えてくれたのは矢野さん。人間的に成長しようと思って、人間的にまねしていこうと思う」

 1軍に定着し始めると、遠征ごとにバッテリーを組む矢野氏に、ご当地のおいしい店に連れて行ってもらった。野球の話をするのが目的ではないが、ふとしたきっかけから、自然と会話は野球になった。本音で語り合ったことが、互いの信頼につながった。同じ関係を、若手捕手とも築きたい。期待をかける1人が、今季外野を守りながら捕手志望の狩野だ。

 「狩野は性格がキャッチャー。戻れるなら、キャッチャーをやるべきだ。狩野は今年は外野だったけど、ピッチャーとばかりご飯に行く」

 狩野が、投手と食事しながらコミュニケーションをとる姿を好ましく見ていた。09年は127試合に捕手として出場。だが、城島の加入で今季は外野を守るようになった。それでも捕手であり続けようとし、投手陣からの信頼もある。11月11日には腰椎椎間板切除術を受けたが、捕手として復帰すべきと考えている。

 一方、矢野氏の背番号39を受け継いだ小宮山には、コミュニケーション不足を説教したことも明かした。後半戦は1軍に定着し、秋季キャンプでも守備力の高さを評価されている。だが、グラウンドを離れ緊張がほぐれると、投手よりも気心知れた野手との付き合いに時間を割いていた。自分から投手を食事に誘い、野球談議を通して信頼を得るくらいの積極性がほしい。

 「小宮山は(1軍の)空気に慣れるのに必死。(慣れれば)パッと出ても、パニックにならない。キャッチャーは、ピッチャーの信頼を得ないといけない」

 9月9日、中日戦(甲子園)。2-2のまま延長へ突入。接戦で試合経験のない女房役を、投手の藤川がリードし、延長12回引き分けに持ち込んだ。本来は小宮山に攻め方を考えさせたかった。球史に名を残すような名コンビへ。より強固なバッテリーの信頼が、勝利への近道と信じている。

 [2010年12月19日10時57分

 紙面から]ソーシャルブックマーク