球界の功労者をたたえる「野球殿堂入り」が14日、野球体育博物館(東京ドーム内)で発表された。競技者表彰プレーヤー部門は3冠王を3度獲得し、現在も中日監督を務める落合博満氏(57)が選ばれた。現役監督の殿堂入りは、川上哲治、鶴岡一人両氏以来で46年ぶり3人目。表彰式は球宴第1戦(7月22日=ナゴヤドーム)で行われる。殿堂入りはこれで173人となった。

 後世に語り継がれる栄誉を、落合監督は謹んで受けた。会見の壇上に上がると喜びを素直に表現した。

 「私はユニホームを着ている間はこの賞とは無縁だろうと思っていました。ユニホームを脱いでから、いつか、もらえればいいなと思っていた。私だけではなく、女房、息子、息子の嫁と4人でささやかな祝杯を挙げたいと思います」。

 07年に規定が変わり、監督としてユニホームを着ていながら殿堂入り候補者になった。09年、10年と2年連続で1票足りずに落選した。突出した実績があるのになぜか?

 賛否が巻き起こった。ゲストスピーチをした中日OBの杉下茂氏は「もっと早く入ってしかるべき」と断じた。

 「それについては私は何も言いません。ただ、どうせなら3年連続1票差で落選した方がおもしろかったんじゃないか。他人がやらないことをやるのはいいことだろ。ハハハッ」。

 昔から言葉より行動で自らを表現してきた。誤解もされたが、逆に正当に評価されない悔しさをエネルギーに変えてきた。そんな野球人生を振り返って言ったことがある。「オレのやったことが評価されるのはオレが死んでからだろうな」。そんな覚悟があったからこそ、1票差の落選を笑い飛ばせた。

 長男福嗣さん(23)には、ことあるごとに「生まれたからには名を残せ」と言ってきた。殿堂入りで落合博満の名前は野球体育博物館において永久に保存される。MVP、数々の打撃タイトル、正力賞、そして殿堂入り…。多くの栄誉を手中にした落合監督は最後にこう言った。

 「野球界からもらえるものは全部いただいた。これが最後の賞でしょう。これから野球界のためにひと肌でも、ふた肌でも脱ぎたい。野村さんの代わりと言っては何ですが、これからも小言を言います。それに耳を傾けてくれるコミッショナーだと信じています」。出席した加藤コミッショナー、野村克也・楽天名誉監督をちらりと見やった。【鈴木忠平】

 [2011年1月15日8時56分

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