大雪の中、歩を進める姿は絵になっていた。30日、仙台市の大崎八幡宮で必勝祈願。楽天星野仙一監督(64)を迎え体制を一新。松井稼頭央内野手(35)岩村明憲内野手(31)ら移籍組も全員顔をそろえ、勝負事に特に御利益があるとされる国宝の社殿に逆襲を誓った。仙台市はこの日朝の最低気温が氷点下7度で、この冬一番の冷え込み。「東北を熱くする」と約束した闘将率いるイヌワシ軍団は今日31日にキャンプ地沖縄・久米島に出発。極寒の仙台からパ・リーグに殴り込みをかける。

 御社殿へいざなう赤い鳥居から、98段の石段を踏みしめ、墨色のスーツに身を固めた一団が近づいてきた。左右を囲む巨木に積もっていた粉雪が、北風に激しく舞って視界を遮った。やっと先頭が見えた。星野監督だ。凜(りん)とした顔で、最後は200人も集まったファンのアーチをくぐり社殿に入った。「雪の必勝祈願は初めて。階段を上ったらポカポカしてきた」。最低気温マイナス7度。雪中行軍から闘将軍団の11年が始まった。

 パワースポットとして名高い国宝に頭を下げた。「私が一番、プレッシャーを感じているのではないか」と胸中を吐いた。昨年は最下位。チーム再建を託され最後方から最高峰を目指す。「1年間ケガなく過ごせたらいい。しっかりお願いしました。いつも言っているが、若手の底上げをしっかりする。レギュラーは若手に負けずに。しっかり着地してもらいたい」。まず願ったのは離脱者を出さないことだった。

 兵への配慮を忘れない将だ。球場に戻ると1軍首脳陣とミーティング。「横の連絡を密にしよう。風通しいい組織でいよう」と改めて団結を確認した。迎え入れる沖縄・久米島サイドも準備を整えている。朝、昼、晩と3食、島で評判の手焼きパン店から、粒あんのあんパンを用意してもらった。関係者は「1日数十個仕入れます。いつでも食べてもらえるように」。ポリフェノールを含有するあんこには、疲労回復の他にも集中力が高まるなどの効果がある。久米島赤鶏のオムライスとともに選手に振る舞われる。“兵糧”にも万全を期し、自軍を鍛え上げる。

 絵馬は達筆な行書で「夢」と書いた(写真)。「意味…、聞かなくても分かるだろ」。手を取り合い剣が峰を越えていく。イヌワシを頂まで到達させる。【宮下敬至】

 [2011年1月31日8時29分

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