日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が「魔球」の封印を解き、5年連続で任される12日の開幕西武戦へ向けて総仕上げをした。5日、福岡ヤフードームでのソフトバンクとの練習試合に先発。初回に2点を失い、今季実戦の連続イニング無失点は「16」で途切れたが、ワンシームを今季初めて本格解禁し、7回2失点で11三振を量産した。

 「ねじ伏せたというより、今日はごまかしの投球。自分の投球をすれば問題ない」。見せ場は5回1死。内川に対し、3ボール2ストライクから、懐をえぐるように切れ込んだワンシームを投じた。グシャッという鈍い音とともにバットが粉々に砕け散って三ゴロ。「バットが折れるのは嫌でしょ」。ライバル球団の補強の目玉への、痛烈なあいさつだった。

 「キャンプから、まだ2、3球くらいしか投げていない。思いつきで投げただけ」。同系統の変化をするツーシームをこの日は使わず、右打者の内角、左打者の外角を攻める球種の1つにした。カウントを稼ぎ、決め球にもして変幻自在に多用。「あの球で(バットを)折るべくして折った」と自負できる会心の力勝負だった。

 梨田監督も「立ち上がりで2失点したけれど、全く問題ない」と太鼓判を押した。親友の涌井との至高の投げ合いで、震災復興への祈りを胸に秘めた7年目のシーズンがスタートする。ダルビッシュの突き抜ける1年が、もうすぐ始まる。【高山通史】

 ◆ワンシーム・ファストボール

 球の1本の縫い目(シーム)に人さし指、中指を挟むように掛けて投げる球種。打者の手元で急激に沈むことから「高速シンカー」とも表現される。指に掛ける縫い目が少ないためリリース、制球が不安定になりがちで、大リーグでもハドソン(ブレーブス)やピネイロ(エンゼルス)が投げる程度。広島前田健は今春キャンプで習得に取り組んだ。低めは突如ストンと沈み、高めは打者の手元で伸びるのが特徴的だ。