<楽天3-5日本ハム>◇24日◇ほっともっと神戸

 佑ちゃんは負けない。日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22)がプロ2度目の先発。6回を8安打3失点で、デビュー戦となった17日のロッテ戦に続き2連勝を飾った。2回に山崎、ルイーズにソロ本塁打を浴び、4回以降も再三走者を背負う苦しい展開ながら要所を抑え、プロ最長の6回を乗り切った。楽天の拙攻にも助けられ、不思議と負けない強運ぶりを発揮した。

 はにかんだような軽やかな笑顔の裏に、重い達成感があった。斎藤が、“持っている”という代名詞では片付けられない、充実の1勝の価値を受け止めた。狂喜乱舞するファンの祝福のシャワーを浴びながらも、冷めていた。「1勝目というのは長くやっていればマグレで、ということもある。2連勝ということに意味があるかな、と思う」。おごらず、浮かれず、結果を客観的に分析した。

 2回。2点の援護をもらった直後だ。先頭打者の山崎に直球勝負を挑んだ。主導権を奪った、試合序盤の要所。勢いある投球をすれば、さらに試合の流れを確実なものにできる-。そんな狙いからか、3年目捕手・大野との若手バッテリーで、ベテラン大砲に大胆勝負をかけていた。

 「あの回は山崎さんには真っすぐでいけるかな、と思った」。狙い通りの3球連続での直球勝負で、やや内寄り、低めに甘く入った直球を左翼席まで放り込まれる。2死を奪った後にはルイーズに同点ソロを献上してしまった。しかし、ここで浮足立たないのが斎藤の真骨頂。「2点までならOKというのが、自分の中であった。次の点を与えないように」と、すぐに頭を切り替えた。

 展開を読み、失点まで計算する新人離れした発想で、立ち直った。直球の最速は140キロ。フォーク、カットボール、ツーシーム、スライダーと小さな変化の持ち球を、根気良く低めへ集める。3回は10球すべて変化球、4回は24球中、直球はわずか2球だった。

 「真っすぐでという理想はあるけれど、プロ野球では投げても打たれる」。4回1死一、二塁のピンチで岩村を迎えた。信条を徹底した。最後は落差あるフォークで3球三振。傷口を広げない細心の努力と執着心がデビュー戦2連勝の生命線になった。「今日の勝利の方が投げきった感じが強い」と、自負できた。

 初体験のほっともっと神戸で、また階段を1つ上った。大手弁当チェーン「ほっともっと」は早大時代の4年間、全登板日に同社の看板商品「からあげ弁当」で腹ごしらえするのがルーティンだった。通算31勝を積み上げた大学時代の原点のような敵地。実力だけではなく、不思議な「持ってる」力も証明して、白星を重ねた。

 それでも浮かれることなく、少しだけ自分を戒め、本音を吐露した。「自信が増えるというより、不安が消えていく感じ」。試行錯誤は続くが、賢く、たくましく切り開く。【高山通史】