<西武0-2楽天>◇26日◇皇子山

 貯金を作って仙台に帰る!

 星野監督の公約実現へ、エースが望みをつないだ。楽天岩隈久志投手(30)が西武戦で完封勝利を挙げた。147球の力投で自己最多タイの13三振を奪い、5安打に抑えた。チームは再び貯金1。29日の本拠地Kスタ宮城の試合まで残り1試合。今日も勝ち、貯金2でホームに帰る。

 星野監督はドッシリ構えた。2-0の9回、岩隈が味方の失策もからみ2死満塁を招いた。単打でも同点の危機。投じた球は、すでに144を数えていた。しかし、信頼は絶大。「あそこで点を取られたらいかん。完封すると信じとった」。ベンチから、およそ40メートル先のマウンドに仁王立ちする右腕を直視した。

 カウント1ボール1ストライク。岩隈は首を3度振った。最後はフォーク。代名詞で上本を力ない一ゴロに仕留めると、夜空を見上げた。「粘り強く投げられました」と笑うアンダーシャツは、ぐっしょりぬれていた。最終回のマウンドは志願したもの。「あの展開でしたから」。星野監督も「0で来ていたからね」。エースはエースを知る。世代を超えた両者の思いが一致し、楽天移籍後では、149球を投げた09年8月25日の西武戦に次ぐ投球数が報われた。

 抜群の制球力に仲間の気迫が火を付けた。2回、嶋と鉄平がヘッドスライディングを続け2点を先制し「気持ちが伝わってきた」。星野監督に「心技体が充実している」と言わしめた三振ショーが加速した。変化球を低めに集め、空振り三振8。「マン振り」自慢の西武打線に直球でも押した。見逃し三振が5。6回2死一、二塁では中村を追い込んで内角144キロ。ぴくりとしない大砲のバットに一瞥(べつ)をくれ、2試合連続2ケタ奪三振に到達。自己最多タイ13奪三振で、初の公式戦を迎えた近江の地をどよめかせた。

 地方球場に強い。これで通算6勝1敗。初体験の球場も「気にならなかった」。どんなマウンドでも対応する足腰の強さとボディーバランスを持つ。今春キャンプ、トルネード投法で遠投を繰り返した。極端に体をねじっても軸はぶれない。あえてバランスを取りにくい形で投げ「いろんな体の動きを確認できる」。鍛錬の成果が「序盤からバランスよく投げられた」下地だった。地方ならではの低いマウンドも追い風だった。佐藤投手コーチが明かす。「低いマウンドが好きなんだって。体が突っ込まないから」。傾斜が小さい分、球筋の角度は減るが、それ以上のメリットを得た。

 再び貯金1。29日の仙台開幕まで今日1試合を残すだけ。引き分け以上で星野監督の公約「貯金を作って仙台へ」が実現する。その監督は「これで5割で帰れるが明日も勝って貯金だ」と貪欲に宣言した。岩隈も「明日も勝って帰りたい」と声をそろえた。胸張ってファンの待つ仙台へ。エースがバトンをつないだ。【古川真弥】