<広島6-4阪神>◇26日◇マツダ

 意外…なんて言ったら失礼ですわ。阪神金本知憲外野手(43)が、相手のスキを突く盗塁を決めた。8回先頭で左前打で出塁し、次打者城島の2球目に二盗成功。4点目のホームを踏んだ。43歳0カ月での盗塁は、セ・リーグ最年長。2回に今季初タイムリーもマークし、マルチ安打も今季初。勝利への執念は、若いもんに負けません。

 金本は完全にモーションを盗んでいた。シュルツが投じた城島への2球目。好スタートを切った背番号6が、悠々と二塁を陥れた。この日、2安打目となる左前安打を放った8回。鉄人がまた1つ、球史を塗り替えた。43歳0カ月。96年の巨人落合博満の42歳8カ月を抜き、セ・リーグ最年長盗塁を決めた瞬間だった。

 記念の花束もなければ、笑顔もない。チームは直前、能見が広瀬に3ランを浴び、逆転されていた。とにかく勝ちたい-。その回の先頭打者として、左腕青木から執念のポテン打で塁に出た。そしてモーションの大きいシュルツに真弓監督はGOのサイン。金字塔となった今季初スチールは、以心伝心で生まれた。

 打撃の師匠との因縁が巡るシーズンだ。13日の広島戦(甲子園)では通算2372安打を放ち、落合を抜いて歴代11位に浮上した。「失礼、失礼でしょう。僕と落合さんを比べたら」。思い切り謙遜したが、2日後の15日中日戦で歴代2位の連続出場が1766試合でストップした。「よそで止まるより、オレの目の前で見せてもらってよかった」。今度は落合監督が独特の表現で敬意を示し、18日の試合前には2人で17分も談笑した。不惑を超えて第一線で奮闘を続けた職人同士の空間があった。

 阪神に来て8年間1度も休まず、2度の優勝に貢献した。球団も連続試合出場への特別表彰の準備を進めている。候補の1つに挙がっているのが、5月10日からの広島3連戦(ほっともっと神戸、甲子園)だ。球団首脳は「98年の広島時代に始まった記録。両チームで祝福するのが理想ですね」と言う。その古巣相手にこの日、セ界史の1ページを記したのも何かの縁か。3年目の94年から18年連続盗塁の数字も、また尊い。

 打撃も復調の兆しを見せ始めた。2回1死三塁の好機。前田健の145キロ速球に負けず、力で右前にはじき返して先制点を運んだ。打率が1割を切る寸前で得点圏打率も0割0分0厘だったが、これが出場11試合目の初タイムリー。8回の安打と合わせ初のマルチ安打も記録した。和田打撃コーチは「カネにも出たし、上がってきてほしいね」と願うように言った。敗戦に言葉を発することなくバスに乗り込んだ背番号6。今季2度目の落合超えを逆襲記念日にしたい。【松井清員】