<阪神3-1中日>◇15日◇甲子園

 落合竜が逆襲の陣を整えた-。先発吉見一起投手(26)が7回1/3を3失点で阪神に惜敗。敵地3連勝は実現しなかったが、落合博満監督(57)は8回1死まで121球を投げた大黒柱を収穫に上げた。ネルソン、チェン、吉見の3本柱をぶつけた結果、昨季わずか2勝の鬼門・甲子園で勝ち越し。最大4あった借金を1まで減らした。浮上の予感を抱き、明日17日ロッテ戦(QVCマリン)から交流戦へと向かう。

 落合監督は悠然とした足取りでロッカー室を出てきた。98年以来、13シーズンぶりの甲子園3連勝を狙ったが、わずかに及ばなかった。だが、指揮官は惜敗の悔しさよりも、大黒柱・吉見の投球を収穫に挙げた。

 2回に1点を先制してもらった右腕だが、苦しいマウンドだった。雨で登板が伸び、中9日となった影響か。勝負どころで微妙に制球が乱れた。4回に先頭打者への四球からピンチを招くとマートンに同点打を許した。続く5回には途中出場の伏兵・上本に甘くなった変化球を痛打された。そして、1-2とリードされたまま迎えた7回2死無走者。吉見に打席がまわってきた。代打を送っても不思議ではない場面。それでも落合監督は頑として動かず、7回も続投させた。

 「何があるの。あそこで変えて何が残る?

 先頭とか、1アウトだったら考えるけど、2アウトから代打使って何になる?

 ぽっと出の、初めてマウンドに上がる投手じゃないんだ。80(球)や90(球)で降ろして何があるんだ。いいじゃん。120球投げられるってわかっただけで」。

 さらに、味方打線が8回2死一、二塁という大きなチャンスを逃した後も吉見をマウンドに送った。その8回に再び上本、マートンに打たれ3点目を失ったところで降板させたが、ぎりぎりまで勝敗の行方を吉見に背負わせ続けた。

 「見ての通りです。負けたら一緒なんで…。僕のせいで負けました」。

 吉見は責任を一身に背負った。ただ、今季初黒星という結果の裏には、昨年オフの右肘手術後最多となる121球というプラス材料も隠れている。指揮官が指摘したように、ただの負けではなかった。

 吉見、チェンの2枚看板を欠いた今季は開幕から9戦で2勝6敗1分けとつまずいたが、交流戦前まで25試合を終えてみれば借金1。何より今回、阪神にぶつけたネルソン、チェン、吉見の3本柱がそろったことが大きい。逆襲するための陣容は整った。いざ、交流戦へ-。甲子園を去る指揮官の足取りは、敗戦後とは思えないほど軽かった。【鈴木忠平】