<日本ハム1-0阪神>◇1日◇札幌ドーム

 えっ、いきなり大チャンス?

 虎応援団が得点圏で流す「チャンステーマ」を試合開始から奏でる奇襲作戦だ。鼓舞された虎だが、日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)に最速156キロの剛球と多彩な変化球でひねられ、4安打。2試合連続の完封負けで借金は今季ワースト9にまで膨らんだ。ダルがすごいのは分かるけど、何とかせな。あぁ、完敗…。

 虎応援団の奇襲攻撃もむなしく、ダルビッシュの前に凡打の山を築いた。1回表。阪神ファンが陣取る右翼席から聞こえてきたのは、得点圏に走者がいる場面で主に演奏されるチャンスマーチだった。まだ走者も塁にいない状況。選手個人の応援テーマではなく、試合開始からイケイケのムードをつくりだした。打線のテンションアップを期待しての異例のエールだったが…。

 そんな応援団の切なる思いは、いとも簡単に吹き飛ばされた。ダルビッシュは想定以上の怪物だった。初回先頭で3球三振するなど4打数無安打のマートンはこう振り返った。

 「僕はクレメンスらいろいろな投手と対戦してきた。彼らと比較するわけではないが、今夜の登板に関しては今まで対戦した右投手で一番だった。いい投球をしていた」。

 サイヤング賞に歴代最多7度も輝いたメジャー屈指の怪腕の名前を出して、相手のすごさを表現した。

 唯一にして最大のチャンスは3回。1死から林威助外野手(32)が当たり損ねの遊撃内野安打で出塁。次の柴田講平外野手(24)の打席で盗塁のサイン。運よく暴投が重なり、1死三塁の好機が生まれた。わずかに見せたダルビッシュのスキ。だが、ここで怪物右腕が本気モードに切り替える。柴田は国内自己最速156キロの剛球を投げ込まれ最後はスライダーで、マートンは155キロの高いボール球に手を出し、ともに空振り三振。その後は二塁も踏めず、ダルビッシュに冷や汗をかかせることすらできなかった。

 3種類のチャンステーマは3回まで流れた。虎党は総立ちで必死に声援を送ったが、応えられなかった。阪神タイガース札幌応援団の吉田丈晴団長(49)は「今のチームの雰囲気と球場のまったりした雰囲気を変えたかった。今日の投手ではチャンスが少ないだろうし、奇襲みたいなものです」と説明。年に1度の札幌ドーム2連戦は、終わってみれば18イニング無得点と、北の虎ファンをガッカリさせた。

 和田打撃コーチは「ワンチャンスで打てるか打てないかが勝敗を決める試合」と言った。ただでさえ弱り目の猛虎打線。「相手が悪かった」で済ませられないほど、徹底的にたたきのめされた。【柏原誠】