<巨人1-3ヤクルト>◇21日◇東京ドーム

 10年ぶりの優勝を狙う首位ヤクルトを増渕竜義投手(23)が救った。2週間ぶりの先発となった巨人戦で9回2死まで無失点。高橋由にソロ本塁打を浴びて降板し、プロ初完封、初完投をいずれもあと1死で逃したが、チームの連敗を2で止める今季6勝目を挙げた。プロ5年目で巨人戦初勝利。チーム勝ち頭の館山昌平投手(30)が故障で離脱する窮地の中、代役に指名された右腕が救世主となって巨人との差を再び5ゲームに広げた。

 重圧を力に変えた。少々ボールが高めに浮こうとも、増渕は勇気を持ってストライクを投げ込んだ。プロ初完封まであと1人の9回2死。ど真ん中のシンカーを高橋由に右翼席中段へ運ばれ、プロ初完投も手中からするりと逃げた。それでも「自分らしいですね」と爽やかに笑う。「由規から敵を取ってくれとプレッシャーをかけられていた。プレッシャーかかるんじゃないかと思ってたんですけど、逆に燃えますね」。前日に敗れた後輩の雪辱を果たす勝利に胸を張った。

 チームの窮地に奮起した。先発陣の柱である館山が20日に右手指の違和感で登録抹消。増渕自身も不調で7日の前回登板後に2軍落ちし、直球の質から鍛え直す予定だったが、急きょ声がかかった。そうして任された一戦は村中、由規で連敗し、2位巨人に4ゲーム差まで迫られた後の大事なマウンド。気持ちと工夫で向かうしかなかった。

 間合いに変化をつけながら、目いっぱい腕を振った。「毎回苦しかったけど、ボール先行にならなかったのはよかった」。交流戦で西武帆足から学んだ、投球練習でわざとワンバウンドを入れるなどのボールを低めに集める工夫も取り入れた。荒木投手コーチが「あまり良くなかったけど、カーブとスライダーでタイミングを外してくれた。大きな1勝。久しぶりの先発で気持ちが入っている分、少々のコントロールの甘さをカバーできている」とたたえた。勇気で強力打線の恐怖を乗り越えた。

 プロ5年目の巨人戦初勝利は成長を証明するものだった。ルーキーだった07年、4月15日の巨人デビュー戦では同じ東京ドームで3回途中7失点KOされプロ初黒星。前日14日に早大・斎藤佑樹が1年生で開幕投手を務める神宮デビューを華々しく飾った直後に、増渕はプロの厳しさを痛烈に教えられた。それから4年余り。昨季は中継ぎに転向、今季も2軍降格などの経験を積みながら、大きな敵をついに圧倒した。

 小川監督は「増渕は連敗している時に止めてくれることが多い。重圧もあったと思うが、勝ててよかったと思います」と感謝とねぎらいの言葉を贈った。開幕直後の4月17日、3敗1分けで苦しいスタートとなったチームに8回1安打の快投で今季初勝利を呼んだのも増渕。「悔しいけど、とにかく勝ててよかった。自分自身に自信がついた」。土壇場で踏ん張り、強心臓がさらにたくましさを増した。【大塚仁】