<日本ハム2-6楽天>◇23日◇札幌ドーム

 エースで節目の1勝をゲットした。楽天岩隈久志投手(30)が日本ハム打線を7回途中1失点に抑え、約1カ月ぶりの白星で5勝目を挙げた。通算1500投球回も果たし、球団400個目の勝利に花を添えた。ソフトバンク、日本ハムの2強と9戦続く中、チームは3連勝で4位浮上。3位ロッテにも1・5ゲーム差と迫り、再びAクラスが見えてきた。

 勝負の1球が、岩隈の復調を語った。6回2死一、三塁で打席には稲葉。楽天戦の打率4割近い天敵の胸元を、これでもかとえぐりカウント2ボール2ストライク。5球目は一転、アウトローいっぱいに148キロをたたき出した。稲葉を迎えマウンドに来た佐藤投手コーチに続投を志願し「勝負どころと思って投げた」この日最速で見逃し三振。ちょうど通算1500投球回にも達し「支えてもらっている人たちに感謝です」と頭を下げた。

 右肩痛から復帰した7月27日以来の5勝目だ。復帰後、直球は130キロ台にとどまっていたが「腕が振れた」と手応え。ギリギリのところで戦っている。80球未満の降板が続いた8月。周囲に「(肩の状態は)5割か6割」と漏らしたという。投げたいボールが投げられない、もどかしさ。でも言い訳はしなかった。むしろ、感謝の念が湧いた。

 首位ソフトバンクに連勝し敵地入りした前日。「(10勝の)去年より成績が悪いのに…。まだCS圏内。ありがたいですよね」とつぶやいた。5月から2カ月離脱。不在の間もCS争いを続ける仲間への思いを示したかった。そのためにも、自ら携帯型の電気治療機を探し求めた。自宅や球場で肩に当てる。「そうしないと投げられない」。ベンチ入りしない日でも球場に残り、試合終了間際まで治療を続けることもある。最新の家電事情に精通する“家電選手”の努力だった。

 球団通算400勝目。7年かけ全員で積み上げてきた。うち64勝を挙げたエースは「良い通過点。強いチームになるよう、これからも、みんなで頑張っていきたい」。1勝目は05年3月26日、自らの完投で飾った。あれから2341日。新興球団を支え続ける矜恃(きょうじ)は変わらない。【古川真弥】