<中日3-2ヤクルト>◇24日◇ナゴヤドーム

 サヨナラだ、5連勝だ、1・5差だ。中日が5番谷繁元信捕手(40)の通算12度目となるサヨナラ打で首位ヤクルトから劇的勝利を収めた。時間制限による引き分け目前の9回2死一、二塁で左前に落とし、今季6度目のサヨナラ勝ち。今カード3連勝で一気に首位と1・5ゲーム差に迫った。落合博満監督(57)の今季限りの退任発表後は3連勝。逆転Vに、勢いは完全に中日にある。

 40歳の谷繁が、我を忘れて右手を突き上げた。9回2死。ヤクルトの守護神林昌勇の初球を振り抜き左前に落とした。二塁走者は荒木。前夜の決勝点再現のように本塁へ頭から飛び込む。谷繁も何度も跳びはねた。ファンにあいさつする恒例のセレモニーも待たず、落合監督らが待つベンチに駆け込みそうになった。自らのはしゃぎっぷりに「年がいもなく、やっちゃいました。スミマセン」。プロ23年目。百戦錬磨の勝負師も感情を制御できなかった。

 ドラマは落合監督の耳打ちから始まった。9回。無死一塁で指揮官は井端を手招きして呼び寄せ耳元でささやいた。井端は犠打を成功させ、続く森野は敬遠。これで、ヒーローへの舞台が整った谷繁は「(いい場面が)来るなと。うれしかった」。試合時間は3時間29分。今季の規定による引き分け寸前、思い切りの良い初球打ち。大きな勝ち星をもぎ取った。

 「こういう戦いをしていく中でやるのがプロ野球。しんどくなきゃ。楽な仕事なんかない。その中でどうやるか」

 3日前、首位決戦前に指揮官の退任が電撃的に発表された。絶大な信頼とともにずっと正捕手として起用された。ここ数日、谷繁はこの話題に必ずこう返す。「与えられた仕事をやるしかない」。周囲の状況に左右されずプロとしてやるべきことをやり通す。1回、ヤクルト畠山に浴びた2ランがずっと気になっていた。先発ソトの責任ではなく「あのボールを選択したボクのミス」。ミスを帳消しにする、意地の一打でもあった。

 ベンチで谷繁の頭をなでて迎えた指揮官の発したコメントはふた言だけ。「みんないい仕事してる。言うことなし」。時間にして3秒。ぶっきらぼうなねぎらい方だが、これがオレ流。有終の逆転Vへ、もう言葉はいらない。【八反誠】