国内移籍が可能なFA権を取得した栗原健太内野手(29)が21日、権利を行使せずに残留することを表明した。マツダスタジアム内の球団事務所で球団側と4回目の交渉に臨み、1年契約の年俸1億6000万円プラス出来高(金額は推定)を提示されたもよう。契約は持ち越されたが、来季海外FA権を行使してのメジャー挑戦を視野に入れ、単年契約の希望を伝えた。

 コイの主砲がチーム残留を表明した。ただし「複数年になると満足してしまいそうな感じがあったし、1年1年が勝負と思っている」という栗原健太内野手(29)が選んだのは、1年契約。そこには、あこがれのメジャーへの挑戦という選択肢を残しておきたいという思いがあった。

 栗原

 来季順調なら海外FA権も取れる。そのために(権利を)とっておきたかった。

 年明けには、6年連続で米国の施設で自主トレを行っている。メジャーの一流選手とも顔を合わせ、毎年大いに刺激を受けてきた。メジャー挑戦は栗原の夢だ。

 「メジャーに行きたい気持ちは今もあります。ただ、自分のパフォーマンスとか、行って試合に出られるのか…家族のことも考えるし、自分の夢だけではどうなのかなとも思います」

 家族を持つ責任感から、あこがれだけを口にできない。それでも権利を行使しないことで、来オフ海外挑戦への可能性を残した。

 海外挑戦の前に、残留の決め手となった「広島で優勝したい」というもう1つの夢をかなえる。権利を取得してから、夜も眠れないほど悩み、苦しんだ末に出した決断。交渉では、球団にも優勝するために必要なことは何か、自分の考えを率直にぶつけた。

 「今までそういう話をしなかったので言ってみようと。でも少し強く言いすぎたかもしれない」

 4番打者の熱い思いに、交渉窓口の鈴木球団本部長も頼もしげにいう。「4番が打点を稼げばチーム力は上がる。100打点はあげてほしいね」。日南秋季キャンプ中の野村監督も「チームの戦力として欠かせない選手。本人とも話したけど、このチームで勝ちたいと言ってくれた。よかったです」と声をはずませた。入団以来Aクラスもない広島を、海外挑戦という大きな夢を持つ栗原が21年ぶりの優勝へ導く。