「こだわり」の能見流で主砲攻略!!

 阪神能見篤史投手(32)が沖縄・宜野座合同自主トレ2日目の28日、今年初のブルペン投球を行った。捕手を座らせての33球は全球、右打者の内角へ。内角を突くのは強打者を抑える鉄則。セ・リーグには巨人村田、広島栗原ら右の強打者がそろう。内角をえぐり、「主砲封じ」に臨む。

 能見は普段通りの独自ルールを貫いた。ブルペン投球の最初は必ず「右打者の内角」から投げる。暖かい陽光が差し込む宜野座のブルペン。捕球役の片山ブルペン捕手は1度も動くことなく、右打者の内角にミットを構え続けた。白球は糸を引いたように吸い込まれる。33球すべて同じコースに投げ込み、今年初めての本格的な投球を終えた。

 能見

 傾斜のあるところには1回も乗っていなかった。これから徐々にですね。(内角には)前で球を離さないと、あのコースには行かない。そのメリットがありますから。

 右打者の内角にクロスさせる軌道で投げるのは、できるだけ打者に近い位置で球を離すためだ。片山ブルペン捕手も「きっちり体をさばかないといけないのもある。シーズン中もずっと、あのコースから」と説明する。

 公式戦の準備でブルペン投球する際も、必ず右打者の内角から投げ始める。左腕を体に巻き込むように振り切るためにも「クロスの鉄則」を貫く。右打者を想定した内角かという問いには「そうではない」と言い切る。あくまで理想的な投球動作の感覚を追い求めた上で行う「儀式」だ。

 ただ、大黒柱のこだわりは、期せずしてセ・リーグの「主砲つぶし」にも直結する。巨人村田、広島栗原、ヤクルト畠山、DeNAラミレス…。ずらりと並ぶ右打ちのスラッガーを抑えるためには徹底して内角を攻めなければいけない。

 昨季、覇者・中日のブランコに9打数5安打、打率5割5分6厘と痛打され、重要性は身に染みて感じている。1月中旬にも「主砲に打たせないようにね。チームの中心が打てば勝つ確率は高くなる。そこは抑えないといけない」と自覚を口にした。

 攻める姿勢を貫く。周囲には「右打者に外角低めに投げて、右方向に打たれるのが嫌い」とも明かす。ならば、鬼となり、内角を突く。こだわりはブルペンでの調整法にも表れていた。

 能見

 今日はね、33球っていう数字を決めていただけ。今年、33歳?

 そういう見方もありますね~。いやあ、今日は暖かいね~。

 ひょうひょうとした立ち居振る舞いは変わらない。だが、ブルペンでのアクションは強い意志にあふれていた。【酒井俊作】

 ◆能見のこだわり調整

 近年の自主トレでは打撃投手を務めて肩を作っていく練習法に取り組む。1月15日には沖縄・宜野座で今年初めて打撃投手を買って出て、関本、柴田、小宮山に238球を投げる異例の調整を行った。通常は「ブルペン→打撃投手登板」の流れだが、能見は真逆。それでも「投げるのは打者相手ですから。(調整法は)自分で考えました」と説明した。キャンプではマシン打撃にも精力的に励んでおり、幅広い視野でトレーニングに取り組んでいる。