投手キャプテンは「絆」で投げる!!

 阪神藤川球児投手(31)が沖縄キャンプ初日の1日、今季の公式戦で用いるニュータイプのグラブを初使用した。黒い生地に金色で「Bonds(ボンズ)」と刺しゅう。全員のパワーを一方向に向ける結束や絆の意味を刻み込んだ。昨年11月末に和田監督からリーダーに指名され、オフは何度も「一丸態勢」の重要性を訴えた。自ら率先して示し、チームを優勝へと導く。

 長い修羅場を戦い抜くための「相棒」が決まった。キャンプの初日、藤川は真新しい黒色のグラブを使った。サブグラウンドでの遠投。スタッフから投げ込まれた球を丁寧に捕った。

 親指部分は英語の筆記体で「Bonds」と刺しゅうされ、南国の陽光できらめいた。団結、結束、絆…。シンプルな言葉に込められた意味はリリーフエースの熱さを体現。「まだ(型は)出来上がっていないけどね」。今季の公式戦で使う大切なグラブにはチームへの思いがあふれた。

 優勝するために欠かせない「魂」を吹き込んだ。昨季終了後、藤川はアドバイザリー契約を結ぶザナックス社に12年用グラブについて「来年は『結束』と入れてください」とリクエストを出していた。05年にはグラブに「本塁打厳禁」と刺しゅうして大ブレーク。その後も毎年、新調して自らを奮い立たせてきた。同社担当者は「これまでは自身のことが(刺しゅうの意味で)多かったですが、キャプテンになって、チーム全体のことを考えているのだと思います」と説明した。

 当初は「結束」と刺しゅうされたグラブが1月中旬の沖縄自主トレ中に届いたが、文字のバランスが整わず、英語バージョンを再び依頼。1月30日に完成品が球児の手元に届いていた。ベクトルを一方向へ、全員が一致団結して戦う。熱いメッセージを自らのグラブに込めていた。

 昨年11月末、和田監督から鳥谷と共にキャプテンに指名された。投手部門のリーダーとして、オフには口癖のように「意識をどれだけ共有しあえるか。(1軍枠の)28人がまとまれば誰かの責任にすることはない」と話し、一致団結の必要性を説いてきた。自主トレでも若手の鶴や筒井らに指導するなど、リーダーシップを発揮。新ユニホームの左胸にはキャプテンを示す「C」ワッペンも輝く。チーム愛をグラブに託し、球児は12年シーズンのスタートを切った。【酒井俊作】

 ◆藤川のグラブ刺しゅう

 05年はグラブの親指部分に「本塁打厳禁」と縫い込んで戦った。06年は「細心而剛胆」と入れ、精神面の重要性を言い聞かせた。同年WBCでは「World

 No1」バージョンも作製。07年からは「気力一瞬」のフレーズを刺しゅうし「One

 for

 all

 All

 for

 one(1人はみんなのために

 みんなは1人のために)」の文字も加えた。10年は奮い立つ意図のことわざ「Pluck

 up

 your

 heart」を刻む。昨季は不言実行を意味する「Not

 words

 but

 deeds」と入れた。近年のグラブには「本塁厳禁」のワッペンも縫う。担当者は「点を与えないという意味です」と説明した。